崎山蒼志 / Face To Time Case

CD

昨年出た「find fuse in youth」が素晴らしかった崎山蒼志のアルバム。メジャーデビュー後の2ndアルバムということになりますね。 今作もメロディー的には光るものがあり、また全体的なスケール感もアップしています。 ただし、そのスケール感のアップがいい…

野島剛『蔣介石を救った帝国軍人』

もと朝日新聞の記者で『香港とは何か』(ちくま新書)など台湾や香港に関する著作で知られる著者が、2014年に『ラスト・バタリオン』のタイトルで講談社から出版した本が改題されて文庫化されたものになります。 副題は「台湾軍事顧問団・白団の真相」となっ…

村上春樹『女のいない男たち』

映画の『ドライブ・マイ・カー』を見て、その物語の複雑な構造に感心したので、「原作はどうなってるんだろう?」と思い、久々に村上春樹を読んでみました。 以下、映画と本書のネタバレを含む形で書きます。 映画はこの短編集の中から「ドライブ・マイ・カ…

渡辺努『物価とは何か』

ここ最近、ガソリンだけではなく小麦、食用油などさまざまなものの価格が上がっています。ただし、スーパーなどに行けば米や白菜や大根といった冬野菜は例年よりも安い価格になっていることにも気づくでしょう。 このようなさまざまな商品の価格を平均化した…

閻連科『年月日』

現代中国を代表する作家の1人である閻連科。今まで読んだことがなかったので、今回、この『年月日』が白水Uブックに入ったのを機に読んでみました。 最後に置かれた「もう一人の閻連科 ー 日本の読者へ」で、閻連科本人が、自分は「論争を引き起こす作家、凶…

Big Thief / Dragon New Warm Mountain I Believe In You

CD

2019年に「U.F.O.F.」と「Two Hands」いう2枚の良質なアルバムをリリースして一躍脚光を浴びたBig Thiefの新作は20曲1時間20分というボリュームでCDだと2枚組リリース。 もとからメロディは冴えていますし、ボーカルのAdrianneの声もいいのですが、今作では…

S・C・M・ペイン『アジアの多重戦争1911-1949』

満州事変から日中戦争、太平洋戦争という流れを「十五年戦争」というまとまったものとして捉える見方がありますが、本書は中国における1911年の清朝崩壊から1949年の中華人民共和国の成立までを一連の戦争として捉えるというダイナミックな見方を提示してい…

オクテイヴィア・E・バトラー『キンドレット』

黒人の女性SF作家で、ヒューゴ賞やネビュラ賞も獲得したことのあるオクテイヴィア・E・バトラーの長編作品。日本では1992年に翻訳刊行され、今回は河出文庫からの文庫化になります。 26歳の黒人女性のデイナはケヴィンという白人の恋人とともに暮らし、作家…

ジェレミー・ブレーデン/ロジャー・グッドマン『日本の私立大学はなぜ生き残るのか』

なんとも興味を引くタイトルの本ですが、実際に非常に面白いです。 2010年前後、日本では大学の「2018年問題」が新聞や雑誌を賑わせていました。これは2018年頃から日本の18歳人口が大きく減少し始め、それに伴って多くの私立大学が潰れるだろうという予想で…

宇多田ヒカル / BADモード

CD

人間には自分と似ている人間に共感すると同時に、自分とはまったく似ていない人間に感心するというか、畏敬の念を抱くことがあると思うのですが、自分にとって宇多田ヒカルは後者の代表例です。 例えば、"誰にも言わない"の歌詞の次の部分。 一人で生きるよ…

『ドライブ・マイ・カー』

去年の秋から見たいと思いつつも予定が合わなくて「見逃したか…」と思ってましたけど、ようやく見ることができました。 原作は村上春樹の短編で未読なのですが、村上春樹の短編がここまで複雑な構造の話になっていることにまず驚きました。 主人公は舞台俳優…

筒井淳也『社会学』

先日紹介した松林哲也『政治学と因果推論』に続く、岩波の「シリーズ ソーシャル・サイエンス」の1冊。 社会科学の中でも「サイエンス」とみなされにくい社会学について、「社会学もサイエンスである」と主張するのではなく、「社会を知るには非サイエンス的…

呉明益『雨の島』

昨年は、『複眼人』、『眠りの航路』ときて、さらにこの『雨の島』と刊行ラッシュとなった台湾の作家・呉明益。『歩道橋の魔術師』や『自転車泥棒』が文庫化され、売れ方はわからないのですが完全にブレイクした感じですね。 ただ、これだけ翻訳が続いても読…

『クライ・マッチョ』

クリント・イーストウッド、91歳にして監督と主演を務めた作品。 舞台は1980年、かつてはロデオ界のスターだったが、落馬事故をきっかけに落ちぶれた年老いたカウボーイのマイク(クリント・イーストウッド)は、かつての雇用主で恩人でもある人物に「メキシ…

松林哲也『政治学と因果推論』

新しく刊行が始まった岩波の「シリーズ ソーシャル・サイエンス」の1冊。このシリーズは筒井淳也『社会学』も読みましたが(本書のあとに紹介記事を書く予定)、どちらも面白く期待が持てますね。 ここ数年、因果推論に関する本がいくつも出ており、基本的に…

『決戦は日曜日』

宮沢りえが2世議員を、窪田正孝がその秘書を演じた選挙をテーマにした映画。社会科の教員としては見ておかねばと思って見に行ってきました。 谷村(窪田正孝)は、地方都市に地盤を持ち民自党で防衛大臣も務めたことがある(映画中で言及はないけどかなりの…

小林悠太『分散化時代の政策調整』

著者の博論をもとにした本で副題は「内閣府構想の展開と転回」。興味深い現象を分析しているのですが、なかなか紹介するのは難しい本ですね。 タイトルの「分散化時代」と言っても「そんな言葉は聞いたことがないし、何が分散したんだ?」となりますし、「政…

劉慈欣『円 劉慈欣短篇集』

『三体』でスケールの大きなアイディアとストーリーテリングの上手さを存分に示した劉慈欣の短編集。 収録作は以下の通りです。 鯨歌地火(じか)郷村教師繊維メッセンジャーカオスの蝶詩雲栄光と夢円円(ユエンユエン)のシャボン玉二〇一八年四月一日月の光人…

2021年の紅白歌合戦

TV

あけましておめでとうございます。 今年もまずは去年の紅白の振り返りから始まるわけですが、去年の紅白の表のテーマが「カラフル」だったとすれば、裏のテーマは「反逆」あるいは「レジスタンス」と言ってもいいもので、非常に政治的な紅白だったと思います…

2021年の映画

毎年書いている記事なので一応今年書きますが、今年はぜんぜん映画を見れておらず、しかも「これ!」といったものもないのでそんなに書く意味はないような内容。 コロナという要因も大きいのですが、それ以上に会員になっている立川のシネマシティが、TOHOシ…

2021年ベストアルバム

CD

今年もたいして枚数は聴けなかったわけですが、そんな中でも比較的よいアルバムを引き当てることができたのではないかと。 特に上位に上げる3枚はどれもよかったです。チャットモンチーとふくろうずがいなくなってからピンとくるものがなかった邦楽シーンに…

橋本絵莉子 / 日記を燃やして

CD

チャットモンチーの橋本絵莉子のソロアルバム。以前にも波多野裕文と組んだ「橋本絵莉子波多野裕文」はありましたけど、こちらは完全なソロアルバム。 「橋本絵莉子波多野裕文」は楽曲が基本的に波多野裕文だったので、チャットモンチーとは違う世界でしたが…

2021年の本

なんだかあっという間にクリスマスも終わってしまったわけですが、ここで例年のように2021年に読んで面白かった本を小説以外と小説でそれぞれあげてみたいと思います。 小説以外の本は、社会科学系の本がほとんどになりますが、新刊から7冊と文庫化されたも…

倉田徹『香港政治危機』

2014年の雨傘運動、2019年の「逃亡犯条例」改正反対の巨大デモ、そして2020年の香港国家安全維持法(国安法)の制定による民主と自由の蒸発という大きな変化を経験した香港。その香港の大きな変動を政治学者でもある著者が分析した本。 香港返還からの中国と…

宮本浩次 / 縦横無尽

CD

宮本浩次の2ndソロアルバム。「独歩。」のあろカバーアルバムの「ROMANCE」を出し、そして今作の「縦横無尽」となります。 最初の印象としては、楽曲がバラエティに富んでいた「独歩。」に比べるとスタンダードなロック寄りで、そんなにちゃんと聴いているわ…

善教将大『大阪の選択』

今年10月の総選挙で躍進を遂げた維新の会、特に大阪では候補者を立てた選挙区を全勝するなど圧倒的な強さを見せました。結成された当初は「稀代のポピュリスト」橋下徹の人気に引っ張られた政党という見方もあったと思いますが、橋下徹が政界を引退してもそ…

アイリス・オーウェンス『アフター・クロード』

国書刊行会<ドーキー・アーカイヴ>シリーズの1冊。 一風変わったマイナー小説を集めているこのシリーズですが、この『アフター・クロード』はその中でもなかなか強烈な印象を与える作品。 著者の分身とも言える主人公のハリエットが「捨ててやった、クロー…

デイヴィッド・ガーランド『福祉国家』

ミュデ+カルトワッセル『ポピュリズム』やエリカ・フランツ『権威主義』と同じくオックスフォード大学出版会のA Very Short Introductionsシリーズの一冊で、同じ白水社からの出版になります(『ポピュリズム』はハードカバーで『権威主義』と本書はソフト…

NAS / King's Disease

CD

NASの去年出たアルバム。NASは2012年の「Life Is Good」以来ちゃんと聴いていなかったのですが(2013〜17年はアルバムをリリースしなかった)、今回、けっこういいという話を聞いて聴いてみたらけっこうよかったです。 NASくらいの大物になれば、どんどん豪…

宝樹『時間の王』

中国のSF作家であり、あの『三体』の続編を書いて劉慈欣に認められたことでも知られている宝樹(バオシュー)の短編集になります。1980年生まれで、郝景芳や陳楸帆らと同世代になります。 ちなみに宝樹という名前は苗字+名前というわけではなく、ひとまとま…