2022年ベストアルバム

CD

今年は「これ!」という1枚を見つけることができなかった感じですね。一応、そこそこいいアルバムはあったのですが抜けた1枚はなしです。 収録曲の良さならばBig Thiefなんですけど、やはり70分を超えるボリュームはアルバムとしてはどうなのかと。 もうアル…

2022年の映画

今年は去年よりはちゃんと映画を見た気がします。ただし、相変わらず立川シネマシティでやってないとどうしても見逃しちゃう問題はあって、やはり見ている人に比べれば見れていないんだと思います。 それでも、とりあえずは今年の5本をあげておきます。ちな…

2022年の本

気がつけば今年もあと僅か。というわけで恒例の今年の本です。 今年は小説に関しては、朝早起きしなくちゃならない日が多かったので寝る前に読めず+あんまり当たりを引けずで、ほとんど紹介できないですが、それ以外の本に関しては面白いものを読めたと思い…

ジーナ・アポストル『反乱者』

フィリピンに生まれ、アメリカで創作を学んだ女性作家による小説。帯に「超絶メタフィクション長篇」との言葉があるように、かなり複雑な仕掛けをもった小説でになります。 とりあえず、カバー裏の紹介は以下の通り。 フィリピン出身のミステリー作家兼翻訳…

羊文学 / our hope

CD

アニメの『平家物語』のテーマ曲"光るとき"が非常に良かったので、アルバムも買ってみましたが、まず、"光るとき"は非常に良いですね。 アルバムだともう少しギターのザラザラした感じが目立つアレンジなのですが、それを含めていいと思いますし、ボーカル&…

砂原庸介『領域を超えない民主主義』

版元の東京大学出版会からお送りいただきました。どうもありがとうございます。 まず本書のタイトルですが、これが「領域を超える民主主義」だと、「グローバル化の中での、EUなどの国家を超えた主体や国境を超える多国籍企業やNGOの話なのか?」となります…

syrup16g / Les Misé blue

CD

Syrup16g、5年ぶりのニューアルバム。 かなり音圧のあるギターから始まる1曲目の"I Will Come (before new dawn)”から。相変わらずなSyrup16gワールドが展開されていますね。 五十嵐隆も50近くになって、変に成熟してしまってもおかしくない年頃ですが、相変…

柴崎友香『きょうのできごと』

ちょっと前に読んだ『寝ても覚めても』が非常に面白かったので、再び柴崎友香の作品を読んでみました。 この『きょうのできごと』はデビュー作ということでいいのかな? 『寝ても覚めても』はかなりの長期のスパンを描いた小説で妙にスカスカなところのある…

首藤若菜『雇用か賃金か 日本の選択』

新型コロナウイルスによるパンデミックは経済活動に大きな影響を与え、多くの人が職を失いました。 本書の前半では、まさに需要が喪失したといっていい航空業界をとり上げ、日本と欧米の会社で対応がいかに違ったかということから、日本の雇用社会の特質を探…

ルーク・S・ロバーツ『泰平を演じる』

副題は「徳川期日本の政治空間と「公然の秘密」」。 何とも面白そうなタイトルと副題ですが、翻訳に関しても監訳を務める三谷博が本書の面白さに注目してネット上で訳者を募り、それに応じた友田健太郎が訳したというもので、今までにはない切り口で江戸時代…

『すずめの戸締まり』(ダイジンの正体について)

『君の名は。』で明らかに東日本大震災のイメージを見据えた映画を作った新海誠が真正面から東日本大震災を描いた作品。 これを少女がイケメンと出会ってそのイケメンが椅子にされて、椅子とともに全国を旅するロードムービーに仕立てるというのが、まずは良…

Alvvays / Blue Rev

CD

カナダの女性2人、男性3人編成のバンドの3rdアルバム。 1st、2ndとローファイな感じながらもところどころに非常に印象的なメロディがあって今まで聴いてきましたが、この3rdアルバムはもはや「ローファイ」という言葉でくくれないくらいバンドサウンドが充実…

呉濁流『アジアの孤児』

1900年、台湾に生まれ、日本の植民地支配の中で育った著者の手による日本語の小説。植民地支配の中で教育を受けたものの、日本人と同じようにはなれず、一方で大陸に渡れば警戒され、下に見られるという台湾生まれの知識人の悲哀を描いた内容になります。 本…

『アムステルダム』

中心となる3人に、クリスチャン・ベール、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のマーゴット・ロビー、『TENET』のジョン・デビッド・ワシントンを配し、さらにロバート・デ・ニーロや『ボヘミアン・ラプソディ』のラミ・マレック、そしてなぜ…

板橋拓己『分断の克服 1989-1990』

副題は「統一をめぐる西ドイツ外交の挑戦」、ドイツ統一を西ドイツの外相であったゲンシャーを中心に追ったものになります。 著者が訳した本に、ドイツ統一の過程をコンパクトにまとめたアンドレアス・レダー『ドイツ統一』(岩波新書)があります。 この本…

Yeah Yeah Yeahs / Cool It Down

CD

Yeah Yeah Yeahsの9年ぶりのアルバム。まさかここに来てニューアルバムが出るとは思っていませんでしたが、これがなかなか良いです。 Yeah Yeah Yeahsといえば、スカスカのサウンドに表現力のあるKaren Oのヴォーカルが乗っかってくるのが魅力でしたが、本作…

劉慈欣『流浪地球』

『三体』の劉慈欣の短編集。短編といっても50ページ近い作品が多いので中編集くらいなイメージかもしれません。 『三体』はとにかくスケールの大きなアイディアがこれでもかと投下されていて、リアリティなんて考えていられないほどに面白いわけですが、そう…

ケイトリン・ローゼンタール『奴隷会計』

奴隷制というと野蛮で粗野な生産方式と見られていますが、「そうじゃないんだよ、実はかなり複雑な帳簿をつけてデータを駆使して生産性の向上を目指していたんだよ」という内容の本になります。 何といっても本書で興味を引くのは、著者は元マッキンゼーの経…

柴崎友香『寝ても覚めても』

読み始めたときは随分とちぐはぐな印象の小説だなと思いつつも、最後まで読むと「そういうことだったのか!」となる小説。 主人公に感情移入できる人は少ないかもしれませんし、読むのがやめられなくなる小説とかではないのですが、最後のゾワゾワっとする展…

Wet Leg / Wet Leg

CD

リアン・ティーズデールとヘスター・チャンバースからなるUKの女性二人組のバンドのデビューアルバム。 音はスカスカ気味でローファイな感じで、特に複雑なことはやっていないんですけど、メロディと二人のボーカルがいいですね。 ちょっとやさぐれた感じの…

マーガレット・アトウッド『侍女の物語』

ちょっと前に読み終えていたのですが、感想を書く機会を逸していました。有名な作品ですしここでは簡単に感想を書いておきます。 舞台はギレアデ共和国となっていますが、どうやら近未来のアメリカで、出生率の低下に対する反動からか、何よりも生殖が優先さ…

瀧井一博『大久保利通』

副題は「「知」を結ぶ指導者」。 以前著者の書いた『伊藤博文』(中公新書)の副題が「知の政治家」だったことを覚えている人は「また知なのか?」と思うかもしれませんし、大久保をそれなりに知っている人からしても大久保に「知」という特徴を当てはめるこ…

『ブレット・トレイン』

原作は伊坂幸太郎の『マリアビートル』、日本の新幹線を舞台にしたアクションもので主演はブラッド・ピットという作品。 新幹線に乗り合わせた殺し屋たちが、大金の入ったブリーフケースをめぐって争うというストーリーですが、そこにはさまざまな思惑や因縁…

池内恵、宇山智彦、川島真、小泉悠、鈴木一人、鶴岡路人、森聡『ウクライナ戦争と世界のゆくえ』

東京大学出版会から刊行されている「UP plus」シリーズの1冊で、形式としてはムックに近い形になります。 このシリーズでは川島真・森聡編『アフターコロナ時代の米中関係と世界秩序』を読んだことがありますが、『アフターコロナ時代の米中関係と世界秩序』…

『NOPE/ノープ』

人を襲っているらしきチンパンジーの姿が写り、さらに画面が変わって黒人の親子が牧場で馬の調教をしていると、空模様が怪しくなり、空からコインが降ってきて父の頭に直撃して父が亡くなる。 これがこの映画の冒頭のシーンで、監督のジョーダン・ピールにつ…

Stars / From Capelton Hill

CD

Stars、5年ぶり9枚目のアルバム。 1stアルバムのリリースが2001年で、もう20年以上のキャリアがあるバンドですが、1曲目の"Palmistry"から、いかにもStarsなメロディとサウンドです。2曲目の"Pretenders"もそう。"Palmistry"がTorquilメインで、"Pretenders"…

ケネス・盛・マッケルウェイン『日本国憲法の普遍と特異』

「75年間、1文字も変わらなかった世界的に稀有な憲法典」 これは、本書の帯に書かれている言葉ですが、今まで存在した成文憲法中、改正されないままに使われている長さにおいて、日本国憲法は1861年に制定されイタリア憲法に続いて歴代第2位です。日本国憲法…

『劇場版 RE:cycle of the PENGUINDRUM [後編] 僕は君を愛してる』

前編を見た時に、TVシリーズを見ていたはずなのに全然展開を思い出せなかったと書きましたが、後編もそう。いくつかのシーンは見ながら思い出したのですが、特に冠葉と晶馬の子ども時代の教団でのシーンとかは「これってあったっけ??」という感じで、11年…

村田沙耶香『コンビニ人間』

本当に今更という感じで読んだのですが、この小説は文体がすおくいいですね。 マニュアルによって規定されているコンビニに過剰適応した36歳の独身女性の古倉恵子が主人公で、設定自体は思いつきそうですが、それをこういった作品にまで仕上げる腕はさすがだ…

木山幸輔『人権の哲学』

本書の書き出しは次のようなものです。 本書の目的は、人権に確定性を与えつつ、当該概念を適切に正当化する、そうした構想を提示することにある。より具体的にいえば、本書の目的は、人権の適切な構想として自然本性的構想、なかんずく二元的理論と本書が呼…