国内小説

 舞城王太郎『イキルキス』

中編集で2008年発表の「イキルキス」、2002年発表の「鼻クソご飯」、2004年発表の「パッキャラ魔道」を収録。 ふつうは表題作でもあり、収録作の中でも一番新しい作品でもある「イキルキス」に注目して感想を書くべきかもしれませんが、「イキルキス」は西暁…

 桐野夏生『I'm sorry,mama. 』

ストーリーとしてはいまいち展開しきれなかった感じで、ラストはかなり強引な展開。ただ、登場人物の描き方は桐野夏生ならではの容赦のなさ!「ちょっとした変人」のような人間を書かせるとほんとうまいですね。 この小説、主人公は置屋で生まれ施設で育ち自…

 高橋源一郎『「悪」と戦う』

「高橋源一郎の舞城王太郎化」、この小説を一言で表すとしたらこの言葉になります。 3歳のランちゃんと1歳半のキイちゃんの兄弟。 この兄のランちゃんが時空を超えて、これからあるかもしれない、あるいはあったかもしれないパラレルワールドで「悪」と戦…

 桐野夏生『東京島』

清子は、暴風雨により、孤島に流れついた。夫との酔狂な世界一周クルーズの最中のこと。その後、日本の若者、謎めいた中国人が漂着する。三十一人、その全てが男だ。救出の見込みは依然なく、夫・隆も喪った。だが、たったひとりの女には違いない。求められ…

 阿部和重『ピストルズ』

『シンセミア』に引き続く「神町サーガ」の第2弾。 『シンセミア』の事件後の神町を描き、さらには『グランド・フィナーレ』や『ニッポニア・ニッポン』、『ミステリアス・セッティング』とまでつながっている作品。こう書くと、まさに阿部和重の総決算とも…

 辻村深月『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』

「私は彼女に言いました。すべてを人のせいにして呪うなら、悪いのは高校の先生じゃない。あなたの限界を決めたのはあなたの親だ、と」 「教えてくれなかったのは、見せようとしなかったのは、あなたと同じくその世界を知らなかったお母さんたちだ、と、私は…

 桐野夏生『リアルワールド』

高校三年の夏休み、隣家の少年が母親を撲殺して逃走。ホリニンナこと山中十四子は、携帯電話を通して、逃げる少年ミミズとつながる。そしてテラウチ、ユウザン、キラリン、同じ高校にかよう4人の少女たちが、ミミズの逃亡に関わることに。遊び半分ではじまっ…

 舞城王太郎『ビッチマグネット』

タイトルの「ビッチマグネット」とは、ビッチな女性を引き寄せてしまう男のこと。主人公の弟にその属性(?)があるようです。 と、なかなか面白い語感のタイトルですが、この小説は「ビッチマグネット」や「ビッチ」についての小説というわけではありません…

 東浩紀『クォンタム・ファミリーズ』

東浩紀の小説なんだけど、これは面白い! イーガン的な量子力学を使った多重世界を舞台に、村上春樹から赤木智弘から秋葉原事件からエロゲーからP・K・ディックから郊外論からベーシック・インカムからセカイ系と決断主義から私小説的なものまで、近年、東浩…

 三崎亜記『となり町戦争』

前から少し気になっていたんですが、ブックオフで見つけたので読んでみました。 となり町との間で進められる目に見えない奇妙な戦争を描いた小説です。その奇妙な戦争の様子が非常によく書けています。 例えば、となり町の広報誌に書かれた「さあ、終戦だ!…

 伊坂幸太郎『魔王』

久々の日本人作家の小説。 伊坂幸太郎は『重力ピエロ』だけ読んだことがあって、印象はいまいち。ただ、この『魔王』は日本に出現したファシスト政治家を描いているというとこに興味を持って読んでみました。 この『魔王』は「魔王」と「呼吸」という2つの…

 桐野夏生『グロテスク』

東電OL殺人事件をモデルにした小説ですが、事件をなぞるのではなく、事件からはるかに深くそしてまさに「グロテスク」な世界を描いてみた傑作。 桐野夏生は『残虐記』を読んだことがあったのですが、『残虐記』は面白いもののやや図式的な気がしましたが、こ…

 江國香織『きらきらひかる』読了

普段なら絶対に読まないタイプの小説なのですが、生徒が貸してくれたので読んでみた。 妻はアル中、夫はホモという夫婦を描いた作品ですが、精神医学的にいえば、ここで描かれている関係は共依存ですね。妻は漠然とした不安を抱えて旦那に物を投げつけて暴れ…

 村上春樹『東京奇譚集』読了

旅行に持っていくためにけっこう前に買ったんですが、そのまま放置してました。 収録作は「偶然の旅人」、「ハナレイ・ベイ」、「どこであれそれが見つかりそうな場所で」、「日々移動する腎臓のかたちをした石」、「品川猿」の5篇。 正直、村上春樹の小説…

 古川日出男『ベルカ、吠えないのか?』読了

前々から気になっていて読んでいなかった古川日出男。このたび『ベルカ、吠えないのか?』が文庫になったんで読んでみました。 日本軍の撤退とともにキスカ島に取り残された4頭の軍用犬、スプートニクに乗せられたライカ犬、スプートニク5号に乗り再び地上…

 舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日』読了

上下巻で1000ページを超える大ボリューム作。舞城王太郎は、2004年の傑作『好き好き大好き超愛してる。』以来、『みんな元気』(文庫版で読んだ)とかやや迷走気味で活動のペースも落ちていたのですが、ここに巨編を引っさげて復活。果たしてその出来は…? …

 私家版・世界十大小説 短編編

昨日、はてな界隈で流行っている私家版・世界十大小説をやりましたけど、考えてる最中に、どうしても「十大小説」とかいうと長編、特に大長編を選んでしまうなってことで、短編もちょっと考えてみました。 ・ チェーホフ「かわいい女」かわいい女・犬を連れ…

 桐野夏生『残虐記』読了

桐野夏生『残虐記』を読了。この手の日本のミステリー(?)とかはほとんど読まないのですが、この本は斎藤環がほめていたのを覚えていて、このたび文庫になったので読んでみました。 新潟で起きた少女監禁事件をモチーフに描かれた作品なのですが、世間が期…

 伊藤計劃『虐殺器官』読了

主人公が文学的すぎるとか、主人公がアメリカ人なのになんでこんなに日本人みたいなんだとか、ラストの舞台設定が『ダーウィンの悪夢』そのまんまってのは?とか,いろいろと欠点をあげることはできるけど、これはそういった欠点を補うだけのスケールと衝撃…

 舞城王太郎『みんな元気。』読了

舞城王太郎『みんな元気。』の文庫版を読了。文庫版は単行本『みんな元気。』から「みんな元気。」、「Dead For Good」、『矢を止める五羽の梔鳥」を収録。残りは『スクールアタック・シンドローム』のほうに収録されているみたい。 表題作の「みんな元気。…

 舞城王太郎『九十九十九』読了

舞城王太郎『九十九十九』を読了。東浩紀の『ゲーム的リアリズムの誕生』で取り上げられていて、そういえば舞城王太郎の中でもこれは読んでなかったと思って今回読んだんだけど、毎度のこと無茶苦茶でありながら、面白い。 この小説は清涼院流水のJDCシリー…

 清涼院流水『コズミック』読了

東浩紀の『ゲーム的リアリズムの誕生』を読んで、やっぱ清涼院流水を読んどくべきかと思い文庫版の『コズミック』を読んだ。 1200人の密室殺人ということで上巻はえんえんと殺人事件が続くわけだけど、さすがにちょっと飽きる。それっぽいエピドードが羅列さ…

 桜庭一樹『少女七竈と七人の可愛そうな大人』読了

今日は一日中鼻水が止まらなかったけど、もうスギ花粉?それともなんか別の花粉かなんかに反応するようになっちゃったんだろうか? 東浩紀が「論座」かなんかで今年の3冊にあげていたので桜庭一樹『少女七竈と七人の可愛そうな大人』を読んでみました。桜庭…