政治

 ケネス・シーヴ、 デイヴィッド・スタサヴェージ『金持ち課税』

帯に「民主主義は累進課税を選択しない。選択させたのは、戦争のみだった」との言葉がありますが、これは本書の主張を端的に表している言葉といえるでしょう。 20世紀の前半には累進課税が強化されて格差の縮小が見られたが、後半からは累進課税の弱まりによ…

 アマルティア・セン『アイデンティティと暴力』

少し前に読んだ本で感想を書きそこねていたのですが、これは良い本ですね。現代における理想主義の一つの完成形ともいえるような内容で、理想主義者はもちろん、理想主義を絵空事だとも思っている現実主義者の人も、ぜひ目を通して置くべき本だと思います。 …

待鳥聡史『民主主義にとって政党とは何か』

タイトルからは著者の『政党システムと政党組織』(東京大学出版会)とかぶる内容ではないかと予想しますが、「政党論」のサーベイという色も強かった『政党システムと政党組織』に比べると、民主主義全般、現代の日本政治についても論じており、専門的な興…

 砂原庸介『新築がお好きですか?』

副題は「日本における住宅と政治」。『地方政府の民主主義』、『大阪―大都市は国家を超えるか』、『分裂と統合の民主政治』などの著作で知られる政治学者の著者が日本の住宅問題と都市問題に迫った本になります。 ただ、読んでみると意外と「政治」っぽくな…

 池内恵『シーア派とスンニ派』

池内恵による『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』につづく、新潮選書【中東大混迷を解く】シリーズの第二弾。今回はシーア派とスンニ派というイスラームの宗派対立について、単純にその歴史を紐解くのではなく、そもそも「宗派対立は存在するのか?」、「存在…

 中村元『近現代日本の都市形成と「デモクラシー」』

副題は「20世紀前期/八王子市から考える」。東京の八王子市の1920年代後半から1940年代前半の都市展開と政治情勢を追いながら、普通選挙導入によって政治の世界へと躍り出た「無産」勢力が、地方政治においていかなる動きを見せたのかということを探った本に…

 ミュデ+カルトワッセル『ポピュリズム』

オックスフォード大学出版会のA Very Short Introductionsシリーズの一冊で、短いながらもポピュリズムの本質、形態、影響、危険度といったものを最新事情も踏まえながら多角的に考察しています。 著者はオランダ出身のカス・ミュデとチリ出身のクリストバル…

 河野勝『政治を科学することは可能か』

この本の「はじめに」では、25年以上前、著者がスタンフォード大学にいたときに佐藤誠三郎氏から「政治は科学ですか」と聞かれたエピソードが紹介されています。 佐藤氏の言葉には「政治は科学であるわけない」という響きが込められていたそうですが、それに…

 トーマス・シェリング『紛争の戦略』

2005年にノーベル経済学賞を受賞したトーマス・シェリングの主著。シェリングはノーベル経済学賞を獲っているわけですが、この本が「ポリティカル・サイエンス・クラシックス」シリーズの1冊として刊行されていることからもわかるように、経済学という分野だ…

 河西秀哉『近代天皇制から象徴天皇制へ』

GHQが天皇を「象徴」とする憲法草案を示したとき、それを受け取った政府には思いもよらない条項だったと言われていますが、その割には意外とスムーズに象徴天皇制は定着しました(占領期の行動やたびたび内奏を求めたことなど、昭和天皇には「象徴」をはみ出…

 足立啓二『専制国家史論』

中国社会を日本と対比させながら、中国の社会、政治、経済の特徴を鋭く抉り出した本として評判でありながら絶版で、古書の価格がびっくりするくらい高くなっていた本が、このたびちくま学芸文庫に入りました。 20年前の本で、前半はけっこう硬さも感じられて…

 小林道彦『日本の大陸政策 1895‐1914』

副題は「桂太郎と後藤新平」。桂太郎と後藤新平、そして児玉源太郎が構想した大陸政策を検討し、大正政変の意味をこの構想の挫折に見出しています。 著者の小林道彦については、『政党内閣の崩壊と満州事変―1918~1932』を読んだことがありますが、その膨大な…

 今井真士『権威主義体制と政治制度』

サブタイトルは「「民主化」の時代におけるエジプトの一党優位の実証分析」。権威主義体制がいかに成立し、またそれがいかなる時に「民主化」するのかということを主にエジプトを事例にあげながら分析した本になります。 ただし、「エジプト」という語句がメ…

 阿南友亮『中国はなぜ軍拡を続けるのか』

中国の国防費は90年代以来、ほぼ毎年10%以上の伸びを続け、世界第二位の規模になっています。経済成長とともに国防費が増加するのは当然ですが、2017年も目標とされる経済成長率が6.5%なのに対して国防費は7%伸びるなど、中国の国防費の伸びは周囲を警戒さ…

 三谷太一郎『増補 日本政党政治の形成』

今年読んだ著者の『日本の近代とは何であったのか』(岩波新書)が面白かったのと、たまたま手に取った岡義武『近代日本の政治家』の原敬について書かれた部分が面白かったこともあって、岡義武の弟子筋にあたる著者が原敬をどのように書いているのかに興味…

 苅部直『「維新革命」への道』

明治維新で文明開化が始まったのではない。すでに江戸後期に日本近代はその萌芽を迎えていたのだ――。荻生徂徠、本居宣長、山片蟠桃、頼山陽、福澤諭吉、竹越與三郎ら、徳川時代から明治時代にいたる思想家たちを通観し、十九世紀の日本が自らの「文明」観を…

 笠京子『官僚制改革の条件』

イギリスでは1970年代後半からNPM(ニュー・パブリック・マネジメント)と呼ばれる官僚制の改革が進み、官僚制は大きくその姿を変えました。 一方、日本では1990年代から行政改革が進んだものの、官僚制についての改革はそれほど進まず、ようやく2007年の第1…

 スヴェン・スタインモ『政治経済の生態学』

副題は「スウェーデン・日本・米国の進化と適応」。 「なぜ、同じ資本主義諸国であってもさまざまな社会政治制度が存在するのか?」という問題に、「進化と適応」という概念を適応してその答えを探ろうとした本。著者はアメリカの政治学者で、税制についての…

 井手英策・宇野重規・坂井豊貴・松沢裕作『大人のための社会科』

大人のための社会科の教科書といった体裁の本で企画自体は最近よくある気もしますが、この本は何よりも執筆者が豪華。『多数決を疑う』の坂井豊貴、『自由民権運動』の松沢裕作と、近年の新書の中でもトップクラスの本の著者が入っており、新書読みならば「…

 アマルティア・セン『正義のアイディア』

ノーベル経済学賞の受賞者で、狭い意味での経済分野にとどまらず政治哲学などの分野でも積極的な発言を行っているアマルティア・センの政治哲学分野における代表作。 とにかくセンの凄さを感じさせるのが冒頭の謝辞。ジョン・ロールズやケネス・アローからは…

 なぜ「ポピュリズム」と「新自由主義」は仲が良いのか?

トランプ大統領の誕生など、いわゆる「ポピュリズム」が注目を浴びています。この「ポピュリズム」の定義というのはなかなか難しいもので、政治学者の間でもその捉え方には違いがある状況ですが、多くの分析において「ポピュリズム」の隆盛の原因として広が…

 ポール・ピアソン『ポリティクス・イン・タイム』

政治学において経済学生まれの合理的選択論が幅を利かせる中で、「歴史は重要である」との主張を行った本。原著は2004年の出版ですが、勁草書房の「ポリティカル・サイエンス・クラシックス」の1冊として刊行されていることからも分かるように、すでに重要な…

 砂原庸介『分裂と統合の日本政治』

長らく自民党の一党優位性がつづいた日本の政治は、90年代の小選挙区比例代表制の導入によって政権交代が可能性が高められ、実際に2009年には民主党によって政権交代がなされました。ここまでは選挙制度の改革はその目的を果たしたと言ってもいいでしょう。 …

 茶谷誠一『象徴天皇制の成立』

占領期の政治を詳しく見ていくと、占領期に昭和天皇が果たした役割を無視するわけにはいかないと感じますし、敗戦によって大権を失ったはずの昭和天皇がある意味で生き生きと積極的に政治に関わろうとする姿も見えてきます。 基本的に日本国憲法の施行によっ…

 ウェンディ・ブラウン『いかにして民主主義は失われていくのか』

一言でいえば新自由主義批判の本ですが、新自由主義がいかに格差社会を生み出したか、というような批判ではなく、新自由主義が政治の語彙を経済の語彙に変えてしまい、それが政治を歪めているということを、フーコーの『生政治の誕生』における「統治」の概…

 マイケル・L・ロス『レント、レント・シージング、制度崩壊』

『石油の呪い』が面白かったマイケル・L・ロスが2001年に出した本の翻訳で、こちらは木材ブームとそれが制度にもたらす影響を分析しています。 原題は「TIMBER BOOMS AND INSTITUTIONAL BREAKDOWN」。それをレント・シーキングを研究する研究者たちが訳した…

 ヤン=ヴェルナー・ミュラー『ポピュリズムとは何か』

イギリスのEU離脱の国民投票にトランプ大統領の誕生と、去年から「ポピュリズム」という言葉が世界の流行語大賞になるのではないかというくらいに使われていますが、では、「ポピュリズムとは何か?」と問われると意外にその答えは難しいと思います。 去年の…

 田中拓道『福祉政治史』

「福祉国家」というと、もはや否定されつつある古臭いイメージがあるかもしれませんが、「福祉国家」は死滅しつつある存在ではありません。スウェーデンなどの北欧諸国はさまざまな改革を行いつつ、充実した福祉と経済的パフォーマンスを両立させていますし…

 真辺将之『大隈重信』

明治初期の日本の近代化を進めた中心人物であり、二度首相を務め、早稲田大学の創立者としても有名な大隈重信。しかし、意外にも手に取りやすい評伝はあまり見当たらないのが現状です。 そんな中で中公叢書から大隈の評伝が登場。本文だけで450ページ超とい…

 竹中治堅編『二つの政権交代』

2009年の民主党の政権獲得と2012年の自民党の政権奪還は政策をどのように変えたのか? これを8人の政治学者が核政策分野を分担する形で論じたのがこの本になります。構成や執筆者からすると御厨貴編『「政治主導」の教訓』のその後を検証したような本といえ…