経済

 ジョージ・A・ アカロフ、ロバート・J・シラー『不道徳な見えざる手』

人間の持つ非合理性を経済学にと入り入れようとした『アニマルスピリット』の著者であるアカロフとシラーのコンビが、市場における詐欺的手法について分析しようとした本。 アカロフは情報の非対称性の研究で、シラーは投機的な市場の研究でノーベル経済学賞…

 マイケル・L・ロス『レント、レント・シージング、制度崩壊』

『石油の呪い』が面白かったマイケル・L・ロスが2001年に出した本の翻訳で、こちらは木材ブームとそれが制度にもたらす影響を分析しています。 原題は「TIMBER BOOMS AND INSTITUTIONAL BREAKDOWN」。それをレント・シーキングを研究する研究者たちが訳した…

 玄田有史編『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』

失業率は2%台に下がり(2017年4月で2.8%)、有効求人倍率も上がり、「バブル以来の人手不足」などという声もあがっていますが、それに反して賃金が上がっているという実感はないですし、実質賃金は上がっているどころか、むしろ低下の傾向も見られます。 こ…

 エステル・デュフロ『貧困と闘う知』

アビジット・V・バナジーとともに『貧乏人の経済学』を書き、マサチューセッツ工科大学でランダム化比較試験(RCT)の手法を駆使してさまざまな研究を行っているエステル・デュフロの著書が『貧乏人の経済学』と同じくみすず書房から登場。 ただし、訳者解説…

 中室牧子・津川友介『「原因と結果」の経済学』

何をもって「因果関係がある」と言えるのかを、近年の研究成果を交えながら明らかにした本。 こう書くと少し難しく感じますが、例えば次の3つの問を見てください。 メタボ健診を受けると長生きする テレビを見せると子どもの学力は下がる 偏差値の高い大学に…

 マイケル・L・ロス『石油の呪い』

サウジアラビアやUAEやクウェートやカタール、あるいはブルネイ、あるいはノルウェー、いずれも豊かな産油国であり、「それに比べて資源の乏しい日本では…」といった思いを抱きがちですが、経済学を少しかじったことのある人なら、石油の存在がかえって経済…

 トーマス・シェリング『ミクロ動機とマクロ行動』

2005年にノーベル経済学賞を受賞し、昨年の12月に95歳で亡くなったトーマス・シェリングの比較的一般向けに書かれた本。 ノーベル経済学賞を受賞したシェリングですが、経済学者というよりはゲーム理論の専門家と言うほうがその業績はわかりやすいかもしれま…

 カウシック・バスー『見えざる手をこえて』

タイトルや最初と最後だけを読めば、よくある主流派経済学批判なのですが、中で行われている議論は非常に面白い。 主流派経済学の方法論的個人主義を批判を行いながら、その方法論的個人主義を捨てたときに出現する厄介な問題にも目を配っており、社会科学に…

 鈴木亘『経済学者 日本の最貧困地域に挑む』

社会保障を専門とする経済学者の鈴木亘が、橋下市長のもとで大阪市の特別顧問となり、日本最大の日雇い市場がを抱えホームレスや生活保護受給者が集中する「あいりん地域」の改革にチャレンジした「戦い」の記録。 タイトルからすると、鈴木亘はあいりん地域…

 O・E・ウィリアムソン『市場と企業組織』

2009年にノーベル経済学賞をエリノア・オストロムとともに受賞したO・E・ウィリアムソンの主著。 さまざまなことが論じられている本ですが、とりあえずは制度派経済学の立場から、「なぜ、すべて市場で取引されるのではなく企業が生まれるのか? 逆になぜす…

 アルビン・E・ロス『Who Gets What (フー・ゲッツ・ホワット) 』

著者のアルビン・E・ロスは2012年にマーケットデザインの研究によってノーベル経済学賞を受賞した経済学者。この本は、その研究を一般向けに語ったものといえます。 経済学というと、需要、供給、そして価格が肝であり、需要と供給が価格によって調整される…

 ウィリアム・イースタリー『エコノミスト 南の貧困と闘う』

一時期、ジェフリー・サックスと援助の有効性を巡って論戦を繰り広げていたウィリアム・イースタリーの本。 『貧困の終焉』で、大規模な援助(ビッグプッシュ)があれば途上国は成長すると考えたサックスに対して、援助は基本的に有効ではなく、かえって成長…

 加藤弘之・梶谷懐編著『二重の罠を超えて進む中国型資本主義』

編著者のおひとりである梶谷懐氏からご恵投いただきました。 タイトルの「二重の罠」とは、中所得国になったあとに経済が停滞してしまう「中所得国の罠」と、市場移行が中途半端な形で停滞している「体制移行の罠」のこと。 サブタイトルは「「曖昧な制度」…

 横山和輝『マーケット進化論』

サブタイトルは「経済が解き明かす日本の歴史」。経済史を専攻する経済学者が、日本におけるマーケット(市場)の発展を読み解いたものになります。 もともとは『経済セミナー』に連載されたコラムが元になっており、きっちりとした経済史というよりは、それ…

 ダグラス・C・ノース『ダグラス・ノース 制度原論』

ノーベル経済学賞受賞者で、去年の11月に95歳で亡くなったダグラス・C・ノースが2005年に出した本の翻訳。原題は"Understanding the Process of Economic Change"、『経済変化の過程を理解する』になります。 ノースの研究の集大成と言っていい本なのかもし…

 権丈善一『ちょっと気になる社会保障』

2009年に民主党に政権を獲らせた一つの大きな要因が「年金問題」でした。「消えた年金」「年金未加入問題」「無年金者の増加」「年金だけでは暮らせない!」「年金は破綻する!」といった声がマスコミに度々登場し、それが「ミスター年金」こと長妻昭議員の…

 アマルティア・セン、ジャン・ドレーズ『開発なき成長の限界』

中国経済に関しては、今まで何冊か本を読んできて現状や問題点が素人なりにつかめてきた感はあるのですが(とりあえず現状と問題点を知りたいなら丸川知雄・梶谷懐『超大国・中国のゆくえ4 経済大国化の軋みとインパクト』と津上俊哉『中国台頭の終焉』を、…

 アンソニー・B・アトキンソン『21世紀の不平等』

著者のアトキンソンは、ピケティによって「格差」や「不平等」が経済学の中心的テーマの一つとなる前から、長年、不平等について研究してきたイギリスの経済学者で、山形浩生による「訳者はしがき」によれば「ピケティの師匠格と言ってもいい存在」(xiiip)…

 アンガス・ディートン『大脱出』

2015年のノーベル経済学賞受賞者、アンガス・ディートンが健康と富と格差の歴史と現状を語った本。裏表紙に書かれている紹介文は以下のようになっています。 世界はより良くなっている――より豊かになり、より健康になり、平均寿命は延びている。 しかしその…

 G・エスピン‐アンデルセン『アンデルセン、福祉を語る』

ここで問題となるのは、死は民主的ではないということである。通常、所得の高かった恵まれた人々の平均余命は長い。所得の高かった人々は、より長い余生を楽しむことになる。つまり、彼らが我々の年金財源から引き出す金額は、平均よりも多いということであ…

 K・ポメランツ『大分岐』

「なぜ、西欧文明が世界を制覇したのか?」、これは歴史を学んだ者お多くが持つ疑問でしょう。 当然、多くの学者もこの疑問を考え続けており、御存知の通り、マックス・ヴェーバーはプロテスタンティズムという宗教にその要因の一つを見ましたし、D・C・ノー…

 中室牧子『「学力」の経済学』

教育というのは日本人の誰もが受けるものです。ですから、会社経営者やアスリート、文学者、大学教授としての経験をもった人は少ないですが、教育を受けた経験のない人というのはほとんどいません。そして、誰もが自分の受けた教育に関して、「あれは良かっ…

 ジェームズ・J・ヘックマン『幼児教育の経済学』

ノーベル経済学賞受賞者のヘックマンが、就学前の教育効果が非常に高いことを実証的に示してみせた本。 「本」と書きましたが、実際に中心になっているのは40pほどの論文で、それに対する10人の学者のコメントとそれに対するヘックマンのリプライ、さらに日…

 梶谷懐『日本と中国、「脱近代」の誘惑』

「日本」と「中国」と「欧米」、この三者の間に線を引こうとしたとき、「日本・欧米/中国」、「日本・中国/欧米」、「日本/欧米・中国」、「日本/中国/欧米」という4種類の線の引き方が可能であり、また可能であるだけでなく、それぞれがそれなりの説得…

 末廣昭『新興アジア経済論』

『タイ 中進国の模索』などの著作で知られる末廣昭による現在のアジア経済をとらえた本。 この本の大きな特徴は著者の特異とする東南アジアだけでなく中国も視野に入れて分析を行っている点と、経済だけでなく好調な経済の裏に潜む社会問題にも焦点を当てて…

 丸川知雄・梶谷懐『超大国・中国のゆくえ4 経済大国化の軋みとインパクト』

『現代中国の産業』、『チャイニーズ・ドリーム』などの著作で、勃興する中国経済の現場に切り込み、ミクロ的な視点から今までの経済の常識をくつがえす中国の姿を描き出してきた丸川知雄と、『現代中国の財政金融システム』で急成長する中国経済のマクロ的…

 神取道宏『ミクロ経済学の力』

勉強のために話題のミクロ経済学の教科書を読みましたが、確かにこれはいい教科書。 正直、文系だった自分にとっては式の変形とか定理の証明とかの部分でついていけない部分もあるんですけど、いくつかの部分で今まで無味乾燥な数式に見えなかった部分が、実…

  D・C・ノース、R・P・トマス『西欧世界の勃興』

以前読んだ、『経済史の構造と変化』が面白かったD・C・ノースの代表作の一つ。最近、復刊されて買おうかと思いながらも高くて手が出なかった所、以前の版の中古が安い値段で出ていたので購入。 タイトルが『西洋世界の勃興』だったので、「なぜ他の世界より…

 佐藤滋・古市将人『租税抵抗の財政学』

日本は世界でも税負担が少ない国であるはずなのに、国民の痛税感、「租税抵抗」は非常に大きい。これはなぜなのか?ということを探った本。「租税抵抗」とは耳慣れない言葉ですが、この本では「税への拒否感」、「税への不信感」といった意味合いで使われて…

 大塚啓二郎『なぜ貧しい国はなくならないのか』

シカゴ大学でノーベル経済学賞を受賞した農業経済学者のセオドア・シュルツに学び、その後も開発経済学、農業経済学の分野で活躍している著者による開発経済学の入門書。 サックスとイースタリーの論争や、アビジット・V・バナジー、エスター・デュフロ『貧…