佐藤友哉『水没ピアノ』読了

 今日の朝日新聞の朝刊にフジテレビの映画の広告があって、『レイクサイドマーダーケース』って作品、監督が青山真治じゃん。映画撮ってたんだ。それより、『月の砂漠』(だっけ?)はどこいったの?

 佐藤友哉の『水没ピアノ』を読了。これは面白い!『フリッカー式』も悪くなかったけど、すこし登場人物が現実離れしていてキャラ小説見たいのを読んでいる気分だったけど、これはリアル。現代の”ひきこもり的メンタリティ”ともいうべきものを余すことなく描けている。東浩紀がほめてたときにすぐ読んでおけばよかった。
 ストーリーは、半ひきこもり的な生活を送る青年の話、密室状況の屋敷で狂ってしまった娘に監禁される家族の話、悪意から逃れられない少女を護り続ける小学生の話、という3つの話が交互に語られる展開で、このうちの真ん中の話は少し弱くて、他の話との絡みもやや物足りなさがあるんだけど、それを挟む青年と小学生の話が素晴らしい。ある種、非常にナルシスティックな語りなんだけど、例えば、同じナルシスティックな語りを行う太宰治が、「僕を愛してくれ」→「(そうならないのは)世の中間違っている」→「(だから)僕を愛してくれ」という安定的なループを描くのに比べると(もちろん太宰には太宰の魅力がありますけど)、こちらは「僕を愛してくれ」→「(そうならないのは)僕が間違っているから」→ … という、痛々しいループをたどります。そして、そのループをやり過ごすための妄想と間違った愛。ラストもぬるい『人間失格』なんかより、ずっと、きます。
 佐藤友哉『水没ピアノ』

晩ご飯は豚汁のようなもの