「知的財産推進計画2004」の見直しに関するパブコメ

 明日まで、下記のところで意見募集してて、あんま意味ないかな?と思いつつも一応意見出しときました。
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/pc/050124comment.html
 明日の午後5時までということなんで、気が向いたら「輸入権廃止しろ」とか書いてみてください。で、以下が僕の出した意見。基本的に今まで出した意見とか要望書をまとめたみたいな感じです。

「知的財産推進計画2004」の見直しに関する意見

 「知的財産推進計画2004」の見直しに関して、著作権の問題を中心に3点要望したいと思います。

1 著作権の期間をこれ以上延長する場合には著作権の登録制度を作ることを要望します。

 著作権の70年への延長が話題になっていますが、この延長は今ある著作権を保護すると同時に、もはやほとんど忘れられようとしている映画や小説などが、パブリックドメインの中で保護される可能性を奪ってしまいます。著作権切れの作品を活用しようという動きは、文化の活性化にもつながりますし、文化の保護という観点からも大切なものだと思います。しかし、著作権が一律70年に延長されてしまったら、こうした文化財は死蔵され、場合によっては失われてしまいます。
 そこで一定期間が過ぎた著作物に関しては、著作権は登録制とし、登録をした著作物のみ著作権が延長されるという仕組みにすべきだと思います。そして登録のさい、1〜10万円ほどの登録料を徴収することにすれば、まだまだ利用されているものの著作権は延長され、それ以外はパブリックドメインに入り、多くの人々の自由な利用が可能になるという、バランスの取れた状態をつくり出すことができると思います。


2 私的録音・録画補償金制度の適用拡大に反対します。

 もともとこの制度は、MDなどに自分のつくった音楽や会議の記録などを録音しても著作権者に一定の補償金が支払われるという欠陥の多い制度で、そうした欠陥を抱えたまま、その対象をデータ用のCD-RやCD-RW、ハードディスクなどに拡大される道を開くことに反対します。

 CD-RやCD-RW、ハードディスクなどに限らず、メモリーカードにも携帯電話にも音楽を記録することができます。もし、今回、補償金の対象を決定する権限が、この制度の権利者を含むような第3者機関に移ることがあれば、この第3者機関はあらゆるものに対する補償金要求のインセンティヴを持つことになり、音楽や映像とは全く関係のない用途で使われているさまざまな機器にまでも、その対象を広げて行く可能性があります。

 現在の制度では、たとえ購入したMDなどを会議などの録音に使用したとしても、それによって補償金の返還を求めるのは難しい状況です。また、補償金の分配のされ方についても疑問があり、例えば、JASRACに登録されていないような海外のアーティストの楽曲をMDに録音した場合、その補償金がそのアーティストにわたっているとは考えられません。

 一部の権利者のために、補償金制度が幅広く課され、その結果、パソコンをはじめとするさまざまな機器が値上がりするようなことは、日本経済にとって大きな損失であり、経済的合理性についても全くないと言っていいです。

 長期的には私的録音・録画補償金制度そのものの廃止を要望するとともに、その拡大に対して反対するものです。

3 昨年の著作権法改正で実施された音楽CDの環流防止制度の廃止を要望します。

 昨年の著作権法改正案では、環流CDを規制する条項が盛り込まれましたが、これは既存のレコード会社のみを保護し、新しい文化の芽を潰すことになる規定だと思います。レコード会社は現在不況の中にあり、安い環流盤や輸入盤を締め出し、少しでも高くCD売りたいと考えるのは自然なことでしょう。しかし、実際にCDが高くなれば、消費者、そして将来のクリエイターは大きな損害を受けます。ミュージシャンとなるには、やはりそれなりの枚数のCDを聴いていなければ難しいと思いますが、もしCDの価格が大幅に上がってしまったら、よほど経済的に恵まれていない限り、満足な数を聴きこなすことはできなくなってしまいます。そうなれば、まちがいなく日本の音楽の質は下がります。ただでさえ、アレンジなどの面で欧米の音楽に大きな後れをとっている日本の音楽シーンのレベルが、これからますます低下していくということを懸念せざるを得ません。

 レコード業界のアジアでの安いCDが逆輸入の形で入って来るという懸念は理解できますが、それはレコード業界の企業努力で何とかすべき問題だと思います。だいたいこれがCDではなくて、家電製品だったら、こんな法律を作ろうと考える人はいるでしょうか?家電業界は、中国をはじめとするアジア諸国の安い製品に苦しめられながらも、コストダウンや海外生産などによって、激しい競争を行っています。一方、レコード業界は国内では再販制度に守られ、しかも海外との競争は今回の法改正で回避しようとする。こんな状況ではいつまでたっても日本のエンターテイメント産業は育ちません。現在、ディスカウントショップなどで邦楽の逆輸入盤が2000円ほどで売られているといいますが、この程度の価格に対しては国内盤の価格を3000円から2300~2500円ほどに引き下げれば十分に対抗できると思います。「輸入権」の創設は明らかに過剰な対応です。

 音楽業界の健全な競争のためにもこの規定はすぐに廃止すべきですし、さらに音楽CDの再販売価格維持制度の指定も取り消すべきだと思います。
 これから知的財産のあり方というものを考えた場合、この知的財産は日本の国家としての競争力強化に活用されるべきであり、特定の業界を保護するために「知的財産」という言葉が使われる自体は許してはならないと思います。