『オールド・ボーイ』のパク・チャヌク監督の新作『親切なクムジャさん』。父親が昨日、『オールド・ボーイ』より面白い、って言ってたんでさっそく見てきました。
話は相変わらずの復讐もの。ただ、『オールド・ボーイ』が監禁された謎や主人公を監禁した相手の真のねらいといったものをミステリー仕立てにしておいて観客を引っ張ったのに比べると、今作はミステリー的な部分は弱い。主人公の復讐計画もそれほど手が込んだものとは言えないし、話の進み方もやや散漫な部分はある。
ただ、そういった欠点を補ってあまりあるのが主人公のイ・ヨンエの存在感と演技。ややまとまりのない脚本も、とにかくイ・ヨンエの存在でもって画面に引きつけられるし、荒唐無稽とも言えるクライマックスに説得力を持たせるのもイ・ヨンエの存在感と絶妙の演技があってこそ。そのクライマックスは、ふつうの映画で描く倫理からはみ出したようなもので、子どもを殺された親たちが集まったシーンはとにかく強烈。
『オールド・ボーイ』もそうだけど、この監督は「いい、悪い」とかそういう次元ではなく、「人間が経験できる「強度」の限界」みたいなものを描こうとしているんだと思う。復讐なんてものは愚かしいものなんだけれども、愚かな人間は復讐を捨てることはできないし、それによって十字架を背負うことがわかっていながらも、その十字架を求めてしまう。ある意味で罰を求めているようなこの状況をパク・チャヌクは執拗に描いていく。でも、それはそういう状況こそがある種の「倫理」を感じさせる場面だからなんでしょう。
このあたりは、ちょっとクリント・イーストウッドの作品なんかにも通じるけど、イーストウッドがそういった話を神話的とも言えるような手法で描くのに対して、パク・チャヌクは漫画的とも言えるような映像表現で描いていっているのが大きな違いかな。
晩ご飯は寄せ鍋→おじや