神田橋條治『精神療法面接のコツ』読了

 神田橋條治『精神療法面接のコツ』を読了。この人の『追補 精神科診断面接のコツ』もとっても面白くてこの日記で紹介したけど、この本もまさに名人芸。それでもって深い。例えば、

「…べき」を「したい」とか、「…たい」を「すべきだ」と考えている特徴は「厄介な症例」であることを示唆する。(135p)

とか 

通常の「因果律」は、悪しき結果には悪しき因を、よき結果には良き因を探そうとする形を取っている。そのことが、内省精神療法を硬化させている。拡充のためには、悪しき結果に善意や善行を因として組み合わせる悲劇・浄瑠璃の図式や、良き結果に悪行や怠惰を因として組み合わせる喜劇の図式を「因果律」として組み込んで保持しておくのがよい。(164p)

とか、さらに次の言葉なんか何気ないけどすごいと思う。

対話において、相手が「わかりません」と答えたら、その瞬間、結果として相手を粗末にする関係を造ったわけである。(192p)

 というわけで、まさに人間関係の名人芸というか倫理というかをかいま見ることのできる本です。

精神療法面接のコツ
神田橋 條治
4753390055