ジーン・ウルフ『拷問者の影』読了

 先月からジーン・ウルフの「新しい太陽の書」シリーズを読んでて、全部読み終わってから感想書こうとも思ったけど、さすがにいつ読み終わるのかわからないので、すこしだけ感想書いておく。
 拷問者組合の徒弟として育ったセヴェリアンが、小さい頃、反逆者ヴォダルスの命を救い、そしてその関係者である高貴な女性を拷問にかける前に彼女の自殺を手助けしてしまったことから、組合を追われ、組合のある城砦を出て流浪の旅に出るというような話。
 拷問者組合という設定が独特だけど、その徒弟として育つセヴェリアンの徒弟時代の描写は本当に見事。『ケルベロス第五の首』の第1部を思い起こさせます。
 その後の流浪の旅の部分はさすがにウルフの短中編に比べれば密度が落ちるんだけど、所々にSF的な謎がちりばめられてあって、今後の展開に期待を持たせます。また、主人公が完全な記憶の持ち主という設定で、その主人公の語りという視点で小説が進むんだけど,故意に(?)、語られていない部分があって、そこがまたウルフらしい仕掛けです(2巻目の最初とかは普通に続いているようで、実はかなり話がとんでいる)。

拷問者の影
岡部 宏之 ジーン・ウルフ
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