ジーン・ウルフ『調停者の鉤爪』読了

 http://d.hatena.ne.jp/morningrain/20060504#p1の『拷問者の影』に引き続き、ジーン・ウルフの「新しい太陽の書」の第2巻『調停者の鉤爪』を読了。
 『拷問者の影』を引き継ぐような形でたんたんと話が続いて行くのなら、ちょっとダレるかな?と思ったんだけど、ぜんぜんそんなことはない。
 いきなりい、少し話がとんでいて、前作の最後でチラッとだけ出てきたジョナスとともに旅を続けるセヴェリアン。今作ではヴォダルスとの再会があり、1巻の冒頭でヴォダルスが墓場にいた謎が明らかになります。そして、徐々に姿を見せ始めるSF的な設定。舞台となる惑星ウールスの過去に栄えた文明とその科学が物語の中で少しずつ明らかになって行きます。
 また、物語の中に組み込まれたウールスの神話や劇中劇の存在が、物語を深め、厚みのある語りと謎を生み出しいています。ここ最近、ファンタジーの大作が相次いで映画化されていますけど、この「新しい太陽の書」は映画化が絶対に不可能なタイプ。まさに小説でなければ描けない世界を描いています。
 あと、作中の警句を一つ。

 いったん他人を救えば、われわれは一生涯その人のものとなる。(中略)他人に真の利益を与える人は、一瞬間、万物主と同じレベルに上る。そして、その昇格への感謝の気持で、その他人に生涯仕えることになるのだ。(109p)

調停者の鉤爪
ジーン ウルフ 岡部 宏之
4150107033


晩ご飯はチンジャオロースと冷奴