阿部和重『グランドフィナーレ』を読了。阿部和重の作品の中だとぜんぜん大したことない作品。露悪的とも言える文体はいつもほどのキレはないし、ラストの付け方も、もともとうまい作家だとは思わないけど、いまいち。
ただ、『無情の世界』所収の「トライアングルズ」が芥川賞を獲れなくて、この作品で獲ったというのは今の芥川賞の惨状を表してて、ちょっと面白い。
村上春樹や高橋源一郎に始まり、最近では舞城王太郎に賞をあげ損ねてる芥川賞ですが、当然のように今まで阿部和重にもあげ損ねてた。そしたら『シンセミア』という大作を書いちゃって、村上春樹、高橋源一郎に続き阿部和重にも賞を出していないという、「芥川賞をもらわないほうが作家としてはかえってよい」ような状態。そこで阿部和重はこの中編を書くことで芥川賞をもらってあげたんじゃないでしょうか?
露悪的な文体や題材はそのままだけど、作中でのIという女性のロリコン批判とかモラリスティックな面があるし、芥川賞の審査員の先生方もギリギリOKみたいなラインなんでしょうね。
まあ、そんな作品。
グランド・フィナーレ
阿部 和重
晩ご飯はハンバーグとトマト