ジャコメッティ展

 今日は葉山にある神奈川県近代美術館までジャコメッティ展を見に行ってきた。逗子駅からバスというかなり遠い所なんだけど、そんな遠くまでいったのはジャコメッティの絵が好きだから。ジャコメッティと言うと彫刻のほうが有名かもしれませんが,むしろすごみがあるのは絵。個人的には一番好きな画家ですね。

 例えば,下に画像を上げたのは妻アネットの肖像画なんだけど、ジャコメッティ肖像画の多くは描くのが難しいとされる真正面からの絵で,鼻の頂点あたりを中心に異常なまでに書き込みがしてある。
 今回の展覧会の紹介ページに載っている矢内原伊作肖像画だと、もはや書き込まれすぎていて顔が塗りつぶされてしまっている感じ。↓
 http://www.tokyo-np.co.jp/event/bi/giacometti/chapter3.html


 ジャコメッティ肖像画にはふつうは見えない線が描き込まれている。例えば,目の周りの線とかあごの所の横のラインとかそういったもの。そういった線は表面上は見えない線だけれども、人間の骨格を考えた場合,確かに頭蓋骨には眼の部分が空洞であり、あごも骨格として少し突き出てる。
 最近はCGが発達して,人間をリアルの描いたフルCGなんかも登場しているけど、CGの顔や表情には何かが足りない。表面的にはリアルに描けているようでも人間の顔の備わっている”リアルさ”というものが、たぶん欠けているんだと思う。
 それに対して,ジャコメッティが描き続けるのは,そうした人間の顔の核心となる”リアルさ”何だと思う。目と鼻と口を描けばそれなりに人間に見えて、マンガなんかはその記号性を利用して表現を成立させているんだけど、ジャコメッティはそういう記号性に頼らない人間の顔というものを描いていて,それにかなり成功していると思う(ちなみに、マンガ家によっては正面からの顔って描かないし、ジャコメッティのこだわる鼻を省略してしまうのもマンガならではの技法)。

 たぶん、これは彼の彫刻にもいえることで、彼の異常なまでに細い人間の彫刻は人間の身体や動きの核心といった部分だけを追求した結果なんでしょう。