麻生太郎の善戦に見る時代の変化

 予想通り安倍晋三自民党の総裁になってしまったわけですが、麻生太郎が党員票で、谷垣禎一が議員票でけっこう善戦したな、というのが今回の結果を受けての印象。特に麻生太郎が党員あるいは一般国民の間でウケているというのは、「時代の変化」というか「国民のマスコミへの信頼感への変化」のようなものを感じさせる。

 もともと麻生太郎は「失言」の常習犯で、Wikipediaに載っているものだけでも次のようなものがある。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BA%BB%E7%94%9F%E5%A4%AA%E9%83%8E

  • 2003年5月31日、東京大学学園祭において「創氏改名朝鮮人が望んだ、日本はハングル普及に貢献した」旨の発言を行い、創氏改名は強制されたものとの立場をとる韓国などの反発を招いた。
  • 2005年10月15日、この日に開館した九州国立博物館の開館記念式典での来賓祝辞の中で「一文化、一文明、一民族、一言語の国は日本のほかにはない」と発言。
  • 2006年2月4日の福岡市での講演において、日本が支配下の台湾の義務教育に力を入れたと指摘した上で「台湾はものすごく教育水準が上がって識字率などが向上したおかげで今極めて教育水準が高い国であるが故に、今の時代に追いつけている」「我々の先輩はやっぱりちゃんとしたことをやっとるなと正直そのとき思った」と述べた。
  • 2006年7月8日に広島市内で行なった公演で、北朝鮮がミサイルを撃ち、主要国が重大な関心を持ったことについて、「金正日に感謝しないといけないな」と発言

など、小泉内閣の閣僚になってからだけでもこんなにもたくさんの「失言」があり、森首相の「神の国発言」に見られるように、この手の「失言」は本来なら国民からの支持を失うはずのもの。
 さらに80年代なら、「韓国併合は合意の上に形成されたもので、日本だけでなく韓国側にも責任がある」と発言した文部大臣の藤尾正行は当時の中曽根首相によって更迭され、日中戦争について「あの当時日本に侵略の意図は無かった」と発言した国土庁長官奥野誠亮は辞任に追い込まれています。
 麻生太郎の上記のような発言も80年代だったらクビがとんでいたでしょう。

 でも麻生太郎は辞任もせずに、さらには今回の総裁選で党員からかなりの支持を集めた。これを「右傾化」の影響と見るのは簡単ですが、個人的には「マスコミの機能低下」、あるいは「マスコミへの信頼感の喪失」という理由が大きいと思います。
 00年代に入り、マスコミは政治家の失言を糾弾するという「正しい立場」を失い、結果的に政治家のクビがとばなくなった、というのことではないでしょうか。

 そのマスコミの機能低下に一役買っていると思われる2ちゃんねるで最近見つけた次のようなコピペがあります。

600 :2Ch新聞週間標語選⑤:2006/09/18(月) 11:20:44 ID:9JVDxRSXO
★目覚めると 採ってないのに ささってる
★業界の 利権守るぞ 宅配制
★高給の 記者を抱えて 庶民とは
★電子化の 波に逆らい ひた走る
★皆が待つ もいちど頼むよ 赤報隊
★K・Yの 署名は記者の 誇りです
★いそいそと 今日も特アに 御注進
★宅配で ゆがむ読者の 知る権利
★知ってても 書かない事実 山とある
★ネットさえ 無ければ バレずに済んだのに
★裏とらず 警察発表 記事にする
★ふざけるな 便所の落書き たてつくな
ヨン様と 韓流賛美で 文化面
★疑うな 共同記事こそ 世論なり
靖国を 拝む政治家  悪い奴
★地方紙も 共同記事で 楽をする
★旅しても 地方紙記事は みな同じ
★在日と 教師は本名 出しません
★亡き陛下 お心飛ばして 媚中記事
★日経の 記者も稼ぐよ インサイダー
★持ち上げて 叩き落して タコ殴り
★朝に日と 書けどチョウニチ 皆が呼ぶ
★見てみたい 今どき朝日読む馬鹿 褒める馬鹿
★バレてるよ 記者が書いてる 「街の声」
★マスコミが 牛耳る我らの 知る権利

 こんなふうに新聞(マスコミ)への評価は最悪であり、「うさんくさい政治家を追求するマスコミ」という図式が崩壊して、むしろ「うさんくさいマスコミに立ち向かう政治家」という図式が出来つつあるというのが、麻生太郎を押し上げた00年代の流れってやつではないでしょうか?
 そして、靖国参拝に見られるように、この図式を誰よりも理解して利用してみせた政治家が小泉首相だと思うのです。

晩ご飯はスパゲッティミートソース