ドン・デリーロ『リブラ 時の秤』読了

 この前、村上春樹の『アフターダーク』のことを書いたときにドン・デリーロの『コズモポリス』に似てるって書いて、それでアマゾンでデリーロのことをチェックしたら、上巻だけ持ってて下巻が手に入ってなかった『リブラ 時の秤』の下巻がマーケットプレイスに出ているのを発見。それで買って上下巻と読んでみた。
 この本はケネディ暗殺についての本で、一応実行犯とされているリー・ハーヴェイ・オズワルドの生涯とケネディの暗殺された1963年11月22日に向けて元CIAの人物などが陰謀をめぐらす断章が交互に配置され、そしてそれが暗殺の日に交差するというような構成。
 まあ、デリーロということで相変わらず書きすぎな部分もなくはないですが、『アンダーワールド』なんかに比べると同じ上下巻でもずっとスピード感がありますし、ミステリー的な要素もあって読ませます。
 ただ、ノンフィクションノベルというわけではなく、あくまでも現実の歪みを少し拡大させすぎながら書いていくデリーロの特徴もよく出ています。
 そして、この本の大きな特徴として、肝心のケネディ大統領のことがまったく書かれていないということがあげられますが、それは現代社会に大きな空虚を感じているデリーロの狙いがもろに出ているところなんでしょうね。

今も下巻だけがAmazonマーケットプレイスにあるみたいです。
リブラ 時の秤〈下〉
真野 明裕 ドン デリーロ
4163125809


晩ご飯は豚汁