阿部和重『ミステリアスセッティング』

 今年もいよいよあとは紅白歌合戦を残すのみとなりましたが、阿部和重『ミステリアスセッティング』を読了。
 今年のベスト小説にもあげましたが、これは面白い!帯の文句は「痛いほど切ない新世代のピュア・ストーリー」となっていて、確かにストーリーを追えば、疑うことを知らずに騙されつづける少女が世界を救う奇跡を起こすって話なんだけど、そこに至るまでの語りが、いかにも阿部和重的。「痛いほど」って部分が「イタいほど」って感じで描かれているんですよね。
 主人公のシオリが妹のノゾミによってバカにされ続けつつも、ある意味妖しい関係であるような部分はストーリーの本筋からするとそこまで力を入れて書かなくてもって気がするんですが、この部分の筆は冴えまくり。主人公は佐藤友哉の描く登場人物みたいなところもあるんだけど、それを描写する筆致はやっぱり圧倒的にシニカル。
 そして、だいたいにおいてドタバタに終わる阿部和重作品の例に漏れず、この作品もドタバタというかとんでもない話になて行くけど、今回は力技で感動のラスト(?)をでっち上げている。よくよく考えると、時代設定とかがすごいことになっているんですが、それなりに感動のラストを「捏造」することに成功していると思います。

ミステリアスセッティング
阿部 和重
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では、よいお年を。