大屋雄裕『法解釈の言語哲学』読了

 大屋雄裕『法解釈の言語哲学』を読了。けっこう期待して読んだんですが、正直いまいちかと…。
 法学の素養がないからかもしれませんけど非常に読みづらい。また構成的にも「法解釈の問題」→「解釈の問題」→クリプキの規則のパラドックス」→「法における懐疑的解決の問題点」→「法の正当化の問題」→「野矢茂樹の根源的規約説」という感じで、著者としては法学でも問題となる「規則に従うこと」を野矢茂樹の根源的規約説で考えたいということなんだろうけど、そこに至る過程があまりにも煩雑で論点が拡散しちゃってる。
 細かい点で言うと、著者はウィトゲンシュタインが『確実性の問題』で提出した「世界像」の問題を、決定的な根拠ではなく、視点を変えれば疑いえるものとして取り上げてますが、それを認めてしまっては規範というものを考える上で重要な基盤をほり崩してしまっていることになるのでは?
 実際著者自身も、「おわりに」の中では他者危害原則の規範的正当化の可能性を語る時に「世界像」を持ち出していますし、もうちょっと慎重に考えるべき問題ではないかと思います。 

法解釈の言語哲学―クリプキから根元的規約主義へ
大屋 雄裕
4326402393


晩ご飯は牛肉のコンソメシチュー