『ブラディ・サンデー』

 去年の『ユナイテッド93』が素晴らしかったポール・グリーングラス監督の『ブラディ・サンデー』をDVDで見たけど、これも素晴らしい映画!
 『ブラディ・サンデー』はU2の名曲"Sunday Bloody Sunday"でも有名な1972年に北アイルランドのデリーで起きた「血の日曜日事件」をドキュメンタリータッチにとった作品。2002年にベルリン国際映画祭で『千と千尋の神隠し』とともに金熊賞を受賞してます。
 『ユナイテッド93』と同じく、実際にその事件に遭遇した市民や元兵士、そしてデリー市民などを使い、「現場」だけを禁欲的に描いている。そして、ポール・グリーングラスの特徴ともいうべき徹底的に「行為」のみを描くスタイルがこの映画でも活かされている。
 『ボーン・スプレマシー』のような娯楽映画だとそれがよくわかるんだけど、とにかくこの監督は徹底的に「行為」のみを描く。登場人物の内面との葛藤とか感情の高ぶりとかをわざわざクローズアップしてみせないで、とにかく次々と「行為」を連接させていくことで映画を動かしていきます。まさに「行為の流れ」とも言えるような手法で、「意識の流れ」によって人々の内面の動きを描写、あるいはつくり出そうとした20世紀前半の小説家に対して、ポール・グリーングラスは表層的な「行為」、そしてそれに誘発される「行為」を描くことでリアリティと緊迫感を獲得しています。
 ほぼすべてを手持ちのカメラで撮影し、BGMもまったくなしという普通の映画とはちょっと違った映画なのですが、まったくダレるところがない。告発とかではないけれど、「とにかく再現しうる限りのものを見てくれ」、というような感じはジャーナリスティックというようりカメラマン的とも言えるかもしれません。
 で、最後のほうで、U2の"Sunday Bloody Sunday"が聴きたいな、と思うと、最後のエンドロールで流れます。ここだけがある種のドラマチックな演出。でも、これがいいんだ。

ブラディ・サンデー スペシャル・エディション
ポール・グリーングラス ジェームズ・ネスビット ティム・ピゴット=スミス
B000B84MYG


晩ご飯は豆乳鍋