上のエントリーで財政赤字と少子化を日本人の二大不安要素と書きましたが、それをも上回る感じで国民に共有されていながらほぼ実態がないのが「治安の悪化」。本当に今の日本で犯罪が激増していると思う人がいるならこの本を読んで下さい。
非常によい本なんで新書は別のブログ(http://blogs.dion.ne.jp/morningrain/)に感想書いてるけど、ここにも転載。
非常にタイムリーでいい本。「治安悪化」が叫ばれるなかで、実は犯罪も少年犯罪も増えてはいないということは、ちょっと統計などを知っている人はご存知のことだと思いますが、そのことを非常に丁寧に説得的に論じた本です。
共著の形で、浜井浩一が1章と4章を、芹沢一也が2章と3章を担当しているのですが、特に浜井浩一の書いた部分はよいです。
犯罪の統計を論じた1章では、加害によって殺される人が一貫して減っていること(特にこれだけ児童虐待が報道されるなかで加害によって死亡する幼児が大きく減っているのには注目すべき)、警察の検挙率の低下は主に桶川ストーカー事件などを受けて警察が事件として認知する件数が増えているのが原因であること、などが非常に丁寧に論じられています。
また、浜井氏が刑務所に勤めていた経験をもとに書いた4章では、刑務所が老人と障害者と外国人で一杯になり、まるでリハビリ施設と化している実態が紹介されています。さらには統計的から90年代後半以降、無職と離婚状態の受刑者が増えている傾向もわかり、仕事や家族から見放された人々が最後に行き着く先としての刑務所像がデータの面からも裏付けられています。
地域の防犯活動がまるでサークル活動のように行われ(「地域安全マップ」づくりの一番の成果が「感動」っていうんですから)、その求心力として「子供の安全」が持ち出されているとする芹沢一也の書いた3章も面白いですし、とにかく今読むべき本と言えるでしょう(特にマスコミ関係者には課題図書としてほしいですね)。
犯罪不安社会 誰もが「不審者」?
浜井 浩一 芹沢 一也
晩ご飯は豚コンソメシチュー