マイケル・オンダーチェ『ライオンの皮をまとって』読了

 マイケル・オンダーチェ『ライオンの皮をまとって』を読了。『イギリス人の患者』(映画『イングリッシュ・ペイシェント』の原作)で有名なオンダーチェですが、この『ライオンの皮をまとって」では、その『イギリス人の患者』に登場するハナとカラヴァッジョが登場。主人公のパトリックがまだ若いハナに話を聴かせるという設定の小説です。
 また、『ビリー・ザ・キッド全仕事』、『バディ・ボールデンを覚えているか』とほぼ詩のコラージュのような作品を書いてきたオンダーチェが、『イギリス人の患者』に見られるような「詩のリズムを取り入れた小説」へと変化していくなかでのターニングポイントであるような作品でもあります。
 
 帯に「<官能>と<労働>の物語」とありますが、特に素晴らしいのがこの<労働>の描写。1910年代から30年代にかけての次々と都市とその機能が建設されていくカナダを舞台にそこで働くさまざまな移民たちの労働が、この本では語られています。
 特に建設中の橋から落ちかけた尼僧を救う、マケドニア系移民ニコラス・テメルコフが描かれる「橋」の章は素晴らしい。職人的な技で黙々と働く男たち、言葉のわからない国にやってきた移民たちのくらし、そして偶然の出会いが描かれるこの章は、これだけ抜き出して短編小説にしてもいけそうです。

 やや、主人公のパトリックの描かれ方がもうちょい足りない気もしますが、独特の文体は相変わらず素晴らしいものがあるし、端的によい小説です。

ライオンの皮をまとって
マイケル オンダーチェ Michael Ondaatje 福間 健二
4891765771


晩ご飯は肉がハンバーグのビーフシチュー