P・K・ディック『ジョーンズの世界』読了

 あんま”積ん読”はしない主義なんで買った本はだいたいすぐ読むようにしているんですが、古本屋で買ってしばらく放置してあったのがこの本。引っ越しで本を整理したのを機に読んどきました。
 『ジョーンズの世界』はP・K・ディック初期の長編で、一年先までの出来事を予知できるジョーンズという男の話なんだけど、それ以外にも金星に移住するためのミュータント、宇宙から太陽系に飛来する漂流者(ドリフター)と呼ばれる謎の物体という2つの大きなアイディアがあって、それがいまいちがっちり噛み合ないまま強引に一つの話にまとめられている感じです。ですから、「もったいない」という気もするのですが、そういった未完成な部分はあってもディックの小悦独特のある種の青臭さというか、純粋さというかを楽しめる作品です。
 <未来の文学>シリーズのSF作家たち、例えばディッシュやスタージョンがヨーロッパの文学の影響を感じさせるのに対して、ディックはジャンルは違うけどトマス・ウルフとかコールドウェルとかアンダスンとかの南部のアメリカ文学っぽさがあるような気がする。「敗者へのシンクロ」というような部分かな?とも思うのですが。

ジョーンズの世界
フィリップ・K. ディック 白石 朗 白石 朗
4488696066


晩ご飯はピーマンとタマネギと豚肉の味噌炒めとキュウイ