内海健『うつ病新時代』読了

 「みすず」の年間アンケートで何人かがあげていたこの本。双極2型障害という耳慣れないうつ病を中心に扱った本です。
 うつ病が増えているという話はよく聞きますし、うつと自殺の関係などもよく取りざたされていますが、現在臨床の場で増えているというのがこの双極2型障害。これはうつ病相に軽躁病相を併せ持つ気分障害で、一方的に意欲の減退などが見られる普通のうつ病とは違い、異常に気分が高揚しある意味で生産的な時期があるのが特徴で、また、やたらにお節介をやいたり一方で自殺企図もあるなど気分の変調が激しいのが特徴です。
 こういう症状を聞くと、境界例に似ている感じがし、実際にこの本を読みはじめたころは「これって境界例じゃないの?」という気もしましたが、この本を読み進めて行くうちにこの病のうつ病的な側面というのも明らかになってきます。
 さらにこの本はそうした双極2型障害の病状を紹介するだけではなく、それをうつ病の歴史の中に位置づけ、さらには社会の変化とそれに伴ううつ病の変化という視点でも分析しています。
 うつ病に関しては笠原嘉の『軽症うつ病』(講談社現代新書)がいいと思っていましたが、そこにはなかったうつ病の新しい様相を教えてくれる本です。

うつ病新時代―双極2型障害という病
内海 健
4585052844


晩ご飯は麻婆豆腐とトマト