民主党の憲法改正案のヤバさ

 憲法改正のための国民投票法案が成立したということで、自民党民主党憲法改正案をチェックしてみたんだけど、民主党の2004年に出された「憲法提言中間報告」はヤバい!自民党の「国を守る責務」とかの復古調が気になる人もいるかもしれないけど、ヤバさでは民主党のほうが上です。

 要約版はこちらのページですが
 http://www.dpj.or.jp/seisaku/sogo/BOX_SG0058.html

 
 まず、最初の「I.文明史的転換に対応する創憲を」の部分にある、

「第3に、「自然と人間の共生」にかかわる環境権の主張もまた例外ではない。21世紀型の新しい人権の確立に向けて、時代は大きく転回しようとしている。私たちは、日本が培ってきた「和の文化」と「自然に対する畏怖」の感情を大切にするべきであると考えている。「和」とは、調和のことであり、社会の「平和」を指すものである。21世紀のキーワードはいまや、「環境」「自然と人間の共生」、そして「平和」であり、日本の伝統的価値観の中にその可能性を見出し、それを憲法規範中に生かす知恵がいま必要である。」

の「日本が培ってきた「和の文化」と「自然に対する畏怖」の感情」なんて、トホホ…以外の何ものでもないし、

もともと、「憲法(コンスティテューション)」とは、国家権力の恣意や一方的な暴力を抑制することに意味があった。あるいは国家権力からの自由を確保することにあった。
 新しいタイプの憲法は、何よりもまず、日本国民の意思を表明し、世界に対して国のあり方を示す一種の「宣言」としての意味合いを強く持つものでなければならない。

なんて部分は、憲法の根本意義というものを軽視しようとする考えで非常に危険。

 さらに人権の条項でも危険な部分はてんこもり。まずは「法の下の平等」。

(3)「法の下の平等」の現代的保障

法の下の平等」が確保されることは憲法上の要件であることを踏まえ、「差別禁止」が私人間であっても適用できるものへと憲法及び関係法の見直しを行う。

 これは、憲法の規定を私人間にも拡大しようというもので、場合によっては広く自由を制限する条項にもなり得ます。
 さらに、表現の自由の制約も堂々と謳ってます。

(4)情報化社会における表現の自由の制約

表現の自由」については、それが人権侵害につながることないよう配意したものにし、その内容を何らかのかたちで、憲法で明示する必要がある。国家機関から独立した第三者機関としての「人権委員会」設置を憲法上明記し、メディアによる人権侵害に対しても、一定の厳格な要件の下で強制調査の権限を与えるべきである。

表現の自由」って人権じゃないのかよ?って思わず言いたくなりますね。

 そして極めつけが憲法改正の手続き。

(5)硬性憲法憲法改正手続き

 硬性憲法の実質を維持しつつも、より柔軟な改正を可能とするために、_改正事項によっては、各議院の3分の2以上の賛成があれば、国民投票を経ずとも憲法改正を可能とする、_ただし、主権の移譲など重要な改正案件に限定して国民投票を義務付け、その場合、有効投票の過半数の賛成を条件とする、など改正手続きを見直す。

 国民投票を経ずとも憲法改正を可能とする」って、最初に「憲法を国民の手に取り戻す」とか書いていませんでしたっけ?
 憲法改正国民投票をなくして、何が「国民の手に取り戻す」なんだ。と。

 私見では9条改正のハードルは国民投票にあると思っていて、自民党などがそれをクリアーするには相当うまいパッケージング(国際貢献と9条改正をうまく絡める)か、北朝鮮などの対外的な脅威が必要になると思っていたのですが、民主の案ならそんなことに頭を使う必要もないですね。
 
 この民主党の改正方針を読むと、「犯罪被害者の人権」とか意味不明な規定はあっても自民党憲法改正草案のほうがかなりまともなものに思えてくる…。
 少なくとも護憲の立場の人は民主党に投票すべきじゃないですね。