鈴木謙介『ウェブ社会の思想』読了

 鈴木謙介『ウェブ社会の思想』を読了。
 東浩紀がブログで愚痴ってた本はこれですね(http://www.hirokiazuma.com/archives/000299.html)。確かに内容的にはもろに東浩紀の近年の仕事とかぶっていますし、その分析もised@glocom(http://www.glocom.jp/ised/)で行われたものとほとんどかぶっていると言ってもいいでしょう。
 そのくせ、あとがきには北田暁大辻大介の名はあっても東浩紀の名前はないし、ised@glocomのことについても触れてないな。東浩紀のブログでの書き方とかにも大人げないものはありますが、でも今回の鈴木謙介の本に関しては怒るのも、まあ無理はないかな。

 で、肝心の中身のほうですが、今回、鈴木謙介はあとがきで今まで避けて来たルポ的なものやサブカルチャー評論をあえた書いた、みたいなことを言っていましたが、それはよかったと思う。というか、それがないと逆につらい本だったかもしれない。
 面白かったのは古谷実の『ヒミズ』や『シガテラ』、西尾維新の「戯言シリーズ」の分析やなど。あと、もう少し突っ込んでほしかったのが、岐阜県で起きた高校1年生による女子中学生殺害事件で、被害者の女子中学生が書いていたケータイ日記のこととか。
 逆に本書の多くを占める理論的な部分は、どうしても単なる紹介にとどまっているし、キーワードのセンスなども宮台真司東浩紀に比べると思想的な蓄積が薄い分、汎用性の薄いものになっていると思う。
 それと、レッシグについての次の部分は間違ってるんじゃない?

 レッシグが、アーキテクチャの設計に関してもっとも危惧しているのは、政府による規制だからだ。(214p)

 こんなふうに書いているけど、レッシグは『コード』で、ネット上で発達するより完全なアーキテクチャに対して、政府が規制をする必要があるかもしれない、っていう非常にデリケートな主張をしているんではなかったでしたっけ?
 まあ、内容的にはised@glocomで話されたことの導入になっていると思うので、これ読んで興味が湧いたらised@glocomのサイトを見てみるといいかもしれません。逆に、ised@glocomを読んでいたら、特に読む必要はないかな。 

ウェブ社会の思想―〈遍在する私〉をどう生きるか
鈴木 謙介
4140910844


晩ご飯はホイコーローと冷奴