戦争と母

 最近の戦争もののドラマだと、社会が戦争一色に塗りつぶされて行く中で母だけがわが子のために平和を願っていた、みたいなものばっかりだけど、実は母こそが戦争の原因だった!

 「世の中に母がないと戦争はない、人口がだんだんと減るからです。しかしそんなことはあり得ないから戦争は絶えない、戦争があるところよき母があれば戦争は勝つ、よき母のもとによき軍人ができるからだ」

 これは中公新書の山室建徳『軍神』283pで紹介されている大本営海軍報道部第一課長平出英夫のお言葉。
 確かに間違いじゃないけど、前半部分の論理の展開はすごいですよね。
 この『軍神』という本は、乃木希典などを描いた前半はあまり面白くないのですが、爆弾三勇士や真珠湾で特殊潜航艇に乗った九軍神などをとりあげた後半の3章4章では「軍神」を通して日本の精神主義が凝り固まって行く様子が見て取れて面白いです。
 昭和期の「軍神」のパターンは、死を覚悟した若い兵士の犠牲→国民熱狂→その母を賛美、といったもので、最後は母親を絶賛して返す刀で若い女性攻撃。
 最近のパターンである、平和を祈り続けた母→返す刀で「最近の若いもんは…」とまったく一緒ですね。
 まあ、戦前・戦中も戦後も、マザコンなんだか何でもかんでも母親に押し付けているんだかよくわからないような風潮は変わってないようで…。

 ってことは、『東京タワー』みたいな本がベストセラーになることこそ「軍靴の足音」!?

軍神―近代日本が生んだ「英雄」たちの軌跡 (中公新書 1904)
山室 建徳
4121019040


晩ご飯はチンジャオロースと冷奴