舞城王太郎『みんな元気。』読了

 舞城王太郎『みんな元気。』の文庫版を読了。文庫版は単行本『みんな元気。』から「みんな元気。」、「Dead For Good」、『矢を止める五羽の梔鳥」を収録。残りは『スクールアタック・シンドローム』のほうに収録されているみたい。
 表題作の「みんな元気。」が全体の8割以上を占める中編で、あとはほんとに短い短編なのですが、この「みんな元気。」が少しちぐはぐな印象を受ける。
 まあ、舞城王太郎のよさは無茶苦茶な話の展開でもあるんだけど、それでもどこかに核となるエピソードとかがあってバラバラになりそうなところをまとめていたりするんだけど、この「みんな元気。」はそういうものがなくて、しかも短いページ数でものすごいスピードで話を展開させているので、話がけっこうバラバラになってしまった感じ。
 ただ、後半の主人公が自分の将来の可能性を同時に体験する部分なんかは、ちょっと東浩紀の「ゲーム的リアリズム」の議論を思い出しました。こういう思い切った仕掛けを作るのは相変わらずうまいです。
 「Dead For Good」は短編ながら、舞城王太郎のテーマとかエッセンスがつまった作品。最後のほうにある

誰かを殺すことが、その殺人者をも一部殺すように、誰かを生むことが、それをする父親、母親をも一部さらに生かすことがあるのかもしれない。(193p)

って部分なんかはまさにそういう気がする。

みんな元気。
舞城 王太郎
4101186324


晩ご飯はナスとタマネギと豚肉の炒め物と冷奴