東浩紀『情報環境論集―東浩紀コレクションS』を読了。
この本は2002年から2003年に「中央公論」で連載された「情報自由論」と1997年から2000年に「InterCommunication」に連載された「サイバースペースはなぜそう呼ばれるか」(連載時のタイトルは「サイバースペースは何故スペースと呼ばれるか」)に「情報社会を理解するためのキーワード」を併せて収録したもの。
連載時からちょこちょこ読んでいたのですが、改めて本になったのはありがたい。特に「情報自由論」は、その後の東浩紀の思想的な転向があって彼の主張からは少しずれてしまったとのことですが、監視社会と自由を考える上で非常にまとまった論考になっています。最近出た、ちくま新書の大屋雄裕『自由とは何か』なんかにもこの「情報自由論」を越えるような知見はほぼないです。
ただ、この本は下記のWEBでも読めます
http://www.hajou.org/infoliberalism/
僕は本の形式でないと集中して読めないのでこの本の出版はありがたかったですが、モニターでも十分な人は上記のWEBからダウンロードしてもよいでしょう。
「サイバースペースはなぜそう呼ばれるか」は本人もあとがきで「失敗」と述べているように、まとまった論考としては未完成な形で終わっています。
基本的にはコンピューター、そしてGUIの登場によって見えるものと見えないものの対立、そしてラカン流の想像界と象徴界の区別が崩れつつあるという話。
ラカン批判としてはずいぶん穴もあると思うんですけど、前半で語られるP.K.ディック論なんかは面白いですし、ベルやトフラーの未来学とポストモダンの関係など興味深いところもありますね。
情報環境論集―東浩紀コレクションS (講談社BOX) (講談社BOX)
東 浩紀
晩ご飯はナスとタマネギと豚肉の炒め物とトマト