タイトルは赤坂真理の『モテたい理由』(講談社現代新書)より。
ま、そうなんだと思う。ネイルアートに惹かれる男ってまずいないよね。
この本は、ちょっと買うのに恥ずかしいタイトルではあるけど、作家の赤坂真理が女性誌を縦横無尽に切りまくってて面白い!
新書は基本的にhttp://blogs.dion.ne.jp/morningrain/で紹介しているんですが、この本はこちらでもご紹介。
「彼友クラクラ服!」とか「愛され系お嬢さん」だとか「1ヶ月ヘアアレンジ劇場」とかを、赤坂真理がバッサバッサと斬ってくれます。
例えば、「JJ』の特集とそのコメント。
愛され系の決め手は第2印象服出会い(第1印象) 友達に誘われた学生合コン
脚見せセクシーで視線集中
ショーパンで脚見せ
ノースリで二の腕見せ初デート(第2印象) 2人だけの映画館デート
実は愛されお嬢さん系
薄ピンク×白のコーデ
膝上ふんわりスカート
肌見せは控えめにうわあ、ただの活字に直してみるとエロいなあ!なんか劣悪なエロスだなあ!(38p)
確かにエロい。
そして「なんじゃこれ?」って感じ。
これ以外にも女性誌には数々の勘違いなのか妄想なのかよくわからないものが満ちあふれており、「ふぇ〜ん、またやっちゃった 栗田先輩が笑ってる…しょぼぼん」のドジっ娘まで!(これも「JJ」)
赤坂真理も指摘しているけどこれはまさにオタクの妄想の裏返し。
このあたりを赤坂真理は本田透の『電波男』なんかにもふれながらけっこう語ってくれたりするわけですが、いちいちごもっともな感じです。
女性誌は「モテる」ためにいろいろな手管を教えてくれるわけですが、男から見ればとんちんかんなものが多いし、意外にメンタリティ的に近いんじゃないかと思われるオタクはノー眼中。
そのあたりに現代社会における男女のすれちがいと受難があるのでないかと。
ただこの位だと、まあ面白い読み物という感じなのですが、この本は女性誌分析から最終的には「戦争」、「アメリカ」、「敗戦の記憶」といったものにまで、現代の男女がおかれた状況の遠因をたどろうとしています。
戦争の記憶とともに抑圧された男性性に触れながら、早稲田実業の斎藤佑樹に「学徒出陣」の影を見て、「ライフスタイル」における「帰国子女」や「ハーフの子ども」といったキーワードに「アメリカの影」を見る。
そう、「アメリカの影」と書きましたが、赤坂真理は実は加藤典洋と似ている!
赤坂真理が加藤典洋の本をどのくらい読んでいるのかは知りませんが、「敗戦」へのこだわりや、戦争体験者の話を聞いた時の態度なんて、まさに加藤典洋的。
実はこのことは、朝日新聞の「ファッション時評」かなんかを赤坂真理がやっていた時からちらっと感じていたのですが、今回の本で確信に変わりました。
なんにせよ「お笑い、女性誌斬り!」としても「現代男女論」としても「加藤典洋的評論」としても面白い本です。