中国の子どもたちに見る中国社会と日本社会

 この前の日曜にNHKで2本のドキュメンタリーがやってた。
 1本目は「激流中国」シリーズの「5年1組 小皇帝の涙」。
 出だしからかなり強烈で、子どもたちがみんなにそれぞれの夢を言うシーンで成績の悪い子が「医者になりたい」って言ったら、先生がすかさず「成績の悪い子が医者になるのは間違いです」。
 事実だけど、日本の小学校の先生は絶対に言わない言葉ですね…。


 そのあとも、子どもたちが親からの成績へのプレッシャーに堪えかねて、子どもたちが親たちを前に「勉強のことばっか言わないで!」と訴えるシーンがあるんだけど、日本だと親たちが反省する場面で、逆に親たちが「いい成績を取らないといい仕事につけないしリストラされちゃうんだ!」って言って子どもたちをやり込めちゃう。「他人と比べないで!」っていう子どもの叫びにも、「社会に出れば大人だって比べられるんだ!」ですからね。


 その後の深夜にやっていた「民主主義・中国」はさらに強烈。
 小学校3年生の学級委員選挙を追ったドキュメンタリーなんだけど、誹謗中傷、供応、買収となんでもあり。
 特技を見せようとした女の子には「おしゃべり女引っ込め!」のヤジで泣かせちゃうし、歌を歌った男の子には「音痴!」の罵声、そして対立候補が互いにそれを煽ってる。
 で、さらにすごいのがこの選挙が家族ぐるみだってこと。
 劣勢だった男の子は、お父さんがクラスのみんなを新しい地下鉄に誘って供応、さらには対立候補へのディベートでの突っ込み方を教える。投票前にはみんなにプレゼントを配ってその子が勝つんだけど、親が協力しているのはその子だけじゃなくて、他の候補の子どもも同じ。相手をいかに攻撃すべきかってことを親が熱心に教えている。
 

 そしてさらに驚くべきことに、先生は特にひどいヤジとか以外注意しようとしない。
 あと、これだけの激しい選挙戦ながら立候補者3人を選ぶのは先生。つまり、先生の推薦がないと立候補できないといういかにも共産圏っぽい「民主主義」。


 まあ、この2本の番組を見ていろいろと思うことはあったけど、強く感じたのは中国では「社会はひどいもんだ」という前提が共有されているってこと。
 確かに、社会では学歴に夜差別はあるし、選挙では誹謗中傷が行われ、選挙の勝敗は資金力で決まったりする。これは何も中国だけのことではなくて日本だって同じ。
 でも、日本ではこうしたことは「あってはならない」ことであって、学校という空間の中では排除されている。
 つまり日本だと、「現実の社会に問題はあったとしても、みんなでよりよい社会をつくるために学校では理想を教えましょう」という考えがとられていると思う。
 それに対して中国では「現実社会にはいろいろな問題があるのだから、学校の内からそれに勝ち抜いていこう」というような考えなんじゃないかな?

 
 これを見ると日本は甘いような気がして、「このままじゃ中国に抜かれる!」みたいな意見も出てくるんだろうけど、もちろん中国の教育がいいとも言えない。ここまでの剥き出しの競争は子どもにとってやはり問題でしょう。
 ただ、余りに理想化された空間を作ることを目的としている日本の教育というのもまた問題なんでしょうね。


晩ご飯はおでん