蒲島郁夫・竹下俊郎・芹沢洋一『メディアと政治』読了

蒲島郁夫・竹下俊郎・芹沢洋一『メディアと政治』を読了。
 メディアと政治の関係についてのテキストで、古典的なメディア理論から主に2次大戦後のアメリカなどでの研究成果、そして日本のメディアの特質、近年の日本政治とメディアの関わりといった事柄が網羅的に学べるようになっています。
 こう書くとよくできたテキストという感じですが、本文の例として、あるいは本文以外のコラムの部分で現在の日本政治とメディアの関わりについてのデータ分析がなされており、現在の政治状況を考える上でも有益な本だと思います。


 例えば、「わが国の政治・社会的集団の影響力ランキング」(36p)で、マスコミ以外のすべての集団(野党のリーダーや農業団体・労働組合のリーダーにいたるまで)がマスコミをもっとも影響力のある集団として捉えていることや、「左翼陣営は、マスメディアがあまりにも右翼的であるとし、右翼陣営は、マスメディアがあまりにも革新的である批判する」(44p)状況などからは、日本社会のメディア観のようなものが浮かび上がってきます。
 また、久米宏の「ニュースステーション」に関する

ニュースステーション」は、特定の政党に対してだけ否定的な評価を加えるのではなく、すべての政治家を等しく否定的に扱うことで、公平さを保っていたのである。(129p)

なんて記述も、今のテレビにおける政治の報道のされ方をズバリ指摘した部分のように思えます。


 この他にも、日本の新聞の政治部のいわゆる番記者の仕事のルーチンやその歴史、テレビや雑誌が政局を動かした例など、日本の政治ジャーナリズム史として楽しめる部分もありますし、政治に興味のある人が斜め読みをしてもそれなりに得るものがあるテキストではないでしょうか?


メディアと政治
蒲島 郁夫 竹下 俊郎 芹川 洋一
4641123101