『ノーカントリー』

 アカデミー賞を獲ってきた『ノーカントリー』を見てきました。
 ただ、コーエン兄弟の映画がもともとそんなに好きじゃないっていうせいもあるのかもしれないけど、アカデミー賞を獲るほどではないような…。
 それでもハビエル・バルデム助演男優賞は超納得。
 今までさんざん「怖い追跡者」が描かれてきましたが、このハビエル・バルデム演じる殺人者ほど怖いのはめったにない。おかっぱ頭の外見から、殺しの手口から、言葉やルールに奇妙にまでこだわる人物像まで、すべてにおいて不気味で、底知れぬ怖さを感じさせます。
 けれど、そのハビエル・バルデムを除くとそれほどの映画じゃないんじゃないか,というのが正直な感想。確かに、劇中の音楽を一切排して緊迫した画面づくりには成功していますし、コーエン兄弟ならではのブラックな笑いも楽しめるのですが、「これがアカデミー賞ならスピルバーグの『激突!』がアカデミー賞獲ってのいいんじゃない?」とも思います(もちろん、『激突!』は面白い映画ですが)。
 つまり、スリルに満ちた追跡劇としてはすごく良くできているのですが、それ以外の部分が弱いと思うんですよね。結局のところ、原題の"No Country for Old Men"(「年寄りに住む国はない」みたいな感じの意味でいいのかな?)→「アメリカの住みにくい国になった」ということ以上のことは言っていないような。
 過激なように見えて,ある意味、保守的な映画じゃないんでしょうか。