宇多田ヒカル/HEART STATION

 デビュー当時はそれほど気にならなかったけど、3rdアルバムのDEEP RIVERあたりからどんどん好きになってきた宇多田ヒカル。今回のアルバムもほんと素晴らしくて、個人的には今までで一番好きかもしれません。
 いつも紹介しているマイナーなアルバムならともかく、ここでこれだけメジャーなアルバムの内容をがんばって説明しようとしてみても意味がないと思うので、"Flavor Of Life -Ballad Version-"〜"Stay Gold"の流れが「犯罪的にせつない」とだけ言っておきます。
 でも、その2曲を聴いて改めて気付いたのが宇多田ヒカルの歌詞の特徴。
 せつない曲、泣きメロの曲というと歌詞は「後悔」とか「美しい思い出」とかそういう過去への言及をキーにして組み立てられているケースが多いのですが(例えば、Travis"Why Does It Always Rain On Me?"の♪Why does it always rain on me?/Is it because I lied when I was seventeen?♪とか、最近の日本の歌だと新垣結衣の"heavenly days"とか。特に"heavenly days"は現在も未来もすべてが急速に過去化されていくような歌)、宇多田ヒカルの歌詞はそういう過去への言及がほとんどない。
 宇多田ヒカルの歌詞はほぼすべて現在の状態に焦点が当てられていて、例えば「孤独」であっても常に現在の孤独な状態にスポットが当てられている。そして、過去への「後悔」が歌われることもあまりなく、歌われるのは未来への「不安」。
 日本の一般的な流行歌が、「”いい思い出化”された過去の失敗」と「明るい未来」の組み合わせパターンが多いことを考えると、この宇多田ヒカルの歌詞の世界はけっこう独特。
 "Stay Gold"の♪悲しいことは きっと/この先にもいっぱいあるわ/My daring Stay gold/傷つくことも大事だから♪なんて歌詞は、すごくありそうで意外にない歌詞なんだと思う。


HEART STATION
宇多田ヒカル
B0012OR6YQ


晩ご飯はチンジャオロースと冷奴