『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』

 見ようかどうしようか迷っていたんですが、3時間強の上映時間じゃDVDになってからは見れないないなっていうのと、水曜ならテアトル新宿が1000円で見れるってことで見てきました。
 感想としては、決して好きではないし他人に強く勧めるわけではありませんが、力のある映画であることは確か。190分という上映時間にもかかわらずダレることなく、緊張感(圧迫感?)をもって見ることができました。


 ニュース映画のように学生運動の解説から入るこの映画は、やがていわゆる総括とリンチのシーンに入っていくのですが、ここのシーンは本当に陰惨。
 人間は密室の集団ではいくらでも愚かにそして恐ろしくなっていくものですが、それが嫌というほど描かれます。
 過去の日和見を克服するためにマッチョ的な考えにとりつかれる森恒夫ルサンチマンに満ちた永田洋子、この2人の方向付けによって狂っていく集団の姿は本当に怖いものです。
 特に、このシーンまで中心的に扱われていた坂井真紀演じる遠山美枝子が総括によってみにくく変形した顔を永田洋子が鏡で見せるシーンはほんとに酷くて、一線を越えてしまった集団の怖さというものを強く感じます。


 そして山を降りたメンバーの一部があさま山荘にたどり着き立て籠りが起こります。
 ここではARATA演じる坂口弘が比較的まともな人間に描かれているので、総括シーンほどの閉塞感は感じません。
 けれども、仲間をリンチして弱い人間性を捨て「共産化」したはずの面々が、母親から「まーくん、まーくん」「マーくんお母さんが撃てますか」などと呼びかけられるシーンは、悲劇と言うべきか喜劇なのかなんとも言えない感情が湧いてきます。


 僕は若松孝二という監督の今までの発言とか政治的な立場については詳しく知らないのですが、赤軍のシンパであっても、森恒夫永田洋子には批判的で、逆にあさま山荘に立て籠った坂口弘らには評価するところがあるみたいですね。
 総括のシーンに比べると、あさま山荘のシーンについてはメンバーたちに寄り添うような視点が見られます。
 それでも、最後の最後で最年少のメンバーでまだ高校生だった加藤元久が、「ここで落とし前をつけなきゃな」という年長のメンバーに対して「落とし前なんかつけられるのかよ!」って叫ぶシーンがあって、これが良かったと思う(印象的にはその後の「僕たちは勇気がなかったんだ!」っていうセリフのほうが強いとは思いますが)。
 例え政治的な思想があろうとも彼が純粋だったとしても、リンチ殺人とは決して取り返しのつかないものであり、時間がたっても美化できるものではない。若松孝二が、その一点をきちんと押さえているということがこの映画を成り立たせていると思います。


 別に連合赤軍のメンバーに共感もしなかったし、あの時代に生まれなくて本当に良かったと思いますが、それでも若松孝二が事件にきちんと向き合ったと追うことは感じられました。


 あと、この映画はちょい役で宮台真司も出ているんだけど、なんか70年代の学生運動の雰囲気とかを知っている世代とまったく知らない世代(僕は74年生まれなんでまったく知りません)には、かなりの断絶があるって思いました。
 あの学生運動の演説と、あれを熱心に聞く普通の学生がいたってのは、なんか信じられないというかリアリティを感じないというか、不思議な感じです。