ピーター・ディキンスン『キングとジョーカー』読了

 ピーター・ディキンスン『キングとジョーカー』を読了。
 まあ、ミステリーなのですが、その設定が独特。舞台は架空のイギリス王室で、しかもしっかりと系図までついた本格的な捏造。ヴィクトリア女王から4代目に当たるビクター二世の王室を舞台に事件は起こります。
 そんな王室で起こるのがさまざまな”いたずら”。”ジョーカー”と呼ばれるなぞの人物が引き起こすいたずらは、食事皿の中に入れられたガマガエル、王の秘書のズボンがすべてきられるといったいわゆる”いたずら”から始まり、やがてそれは殺人事件にまで発展していきます。
 小説の主人公となるのは13歳の王女のルイーズ。そして鍵を握るのが王室で3代にわたる王子や王女を育ててきたミス・ダードン。
 ”ジョーカー”とは誰なのか?そして王室に隠された秘密をめぐって物語は展開します。
 

 ミス・ダードンの存在をはじめとしてある種の荒唐無稽さはあるのですが、王室に関する描写に関しては「こんな感じもありかも」と思わせる説得力があり、特に”内輪の顔”と”よそゆきの顔”という2つの顔の話などは、映画の『クイーン』を思い起こさせます。
 とにかく、この架空の王室という設定は面白いです。
 そして、この小説は単なる謎解きだけではなく、そんな王室の中でルイーズが成長する物語でもあり、そういう視点でもみてもけっこうよくできている話です。


 それにしても扶桑社文庫って置いてない本屋が多いですね。
 けっこう大きな書店で探したんですけど、結局ジュンク堂に行かないとなかった…。

キングとジョーカー (扶桑社ミステリー)
ピーター ディキンスン Peter Dickinson 斎藤 数衛
4594052592