新宿のプラザに『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』を見に行く。封切り2日目の日曜なんで混んでるかと思ったけど、プラザで6割くらいといったとこでしょうかね。
トム・ハンクス演じる主人公のチャーリー・ウィルソンは、美人秘書を侍らせる女好きで酒好き。ただ、いい奴のようで周囲にいろいろ貸しがあるというとりたてて実力があるとも思えない下院議員。そんな彼がテレビのニュースでソ連のアフガニスタン侵攻を知り、CIAなどとともにアフガニスタンのムジャヒディンたちを支援するために奔走するという話。
全体的にコメディータッチで描いている部分も多くて現実味がないのですが、でもこれは実話をもとにしたお話。
ムジャヒディンに渡す武器がアメリカ製では米ソの直接対決になってしまうということで、ソ連製の武器を調達するためにイスラエルに行く!
映画の中で詳しい説明はされていませんが当時のイスラエルには中東戦争でぶんどった大量のソ連製の武器があったんでしょうね。そしてそれをイスラムの国であるパキスタンやアフガニスタンのムジャヒディンたちに供給するというウルトラC。このあたりをチャーリーがうまくまとめてみせるわけです。
で、映画の中ではトントン拍子でムジャヒディンたちへの支援が拡大されていくわけですが、よく考えればこれは怖い話だし、一歩間違えば大スキャンダル。
500万ドルから始まった議会に詳細を伝えない「闇予算」は、チャーリーの活躍もあってあれよあれよという間に10億ドルへ。これだけ巨額の予算が議会のきちんとしたチェックも受けず、しかも海外での武力行使に使われているわけですからね。
コメディータッチにトントン拍子で進むこの映画、けれども、この後のアフガニスタンの状況やムジャヒディンとしてアメリカの訓練を受けたオサマ・ビン・ラディンの存在を知っているものとしては、この成功の先にある苦い結末も当然知っている。
ソ連の撤退後、アフガニスタンで学校建設を提案するチャーリーに対して他の議員の反応は冷たく、エンディングでも述べられているようにチャーリーは最後で失敗します。そして、「アメリカはただ介入して、立ち去るだけだ」という言葉が最後に提示されるのです。
ロバート・レッドフォードの『大いなる陰謀』がまじめすぎるほど真正面から現在のアメリカ政府を批判したのに対して、この『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』は絡めてからチクリと批判している感じ。
『フォレスト・ガンプ』というアメリカの保守派の勝利を高らかに宣言した映画の主演だったトム・ハンクスとしては、まあこんな感じなのかな、と。
映画としてはCIAの工作員を演じるフィリップ・シーモア・ホフマンが好演。一方、ジュリア・ロバーツはだんだん顔が恐くなってきた…。
あと、ソ連のへりのパイロットたちのいかにもアメリカの兵隊がやりそうな会話とかはどうなんだろ?「ソ連」についてはいまだにステレオタイプを引きずっているような。
そして、このあとのアフガニスタンの辿った道に対してはやはりもう少し言及が必要だと思います。
ビン・ラディンだけではなく、この後のアフガニスタンでは内戦とかタリバンいよる支配とかいろいろあったわけですから。