ブレンダン・デュボイズ『合衆国復活の日』読了

 キューバ危機が核戦争に発展し、アメリカの主要都市は壊滅。それから10年経ったアメリカは、イギリスなどからの援助によって生き延びている二流の国家に転落していた…。
 
 いわゆる歴史のIfもので、架空の歴史を背景にしたミステリーアクションもの。もう絶版になってるんですが、ちょっと興味を持って古本で買って読んでみました。
 別に文章的には見るべきものはないですし、ご都合主義的にも見える主人公やヒロイン、とってつけたような渋い脇役、そしてアクションシーンなど、そのまんまハリウッド映画にもなりそうなお話で、ストーリーもややどんでん返しさせすぎのような気もします。
 ただ、この小説の架空の歴史設定というのがよくできてて面白い!

  • キューバ危機でU2偵察機が撃墜された後、アメリカはキューバのミサイル基地を爆撃、さらに海兵隊などを上陸させる。
  • しかし、すでにキューバに運び込まれていた戦術核が上陸部隊に使用され、上陸部隊はほぼ壊滅。
  • アメリカは報復のためソ連を核攻撃。
  • ソ連アメリカへの核攻撃を開始。北極海を越えた爆撃機によってニューヨーク、ワシントン、ロサンゼルスといた主要都市に核爆弾が落とされる。
  • ケネディ大統領以下、政府の主要人物がすべて死亡する中、空軍のカーティス将軍によってソ連と休戦協定が結ばれる。
  • 戦争は終るが、アメリカの主要都市は壊滅。一方、ソ連アメリカの核攻撃により国自体がほぼ壊滅。
  • このあおりで東ヨーロッパ諸国や中華人民共和国も崩壊。
  • 戦争が早めに終結したため、戦火を免れたイギリスやフランス、そしてドイツや日本が世界の中心国となっている。
  • 再び世界の中心的存在になったイギリスは大英帝国を復活させるような形でアジアや北米大陸に進出。
  • アメリカが撤退したことで南ヴェトナムが崩壊したヴェトナムでは、日本とフランスが経済進出を狙っている。
  • 荒廃したアメリカは、イギリスの援助などによって何とか生き延びており、世界中から核戦争を起こした国として恨まれている。
  • メキシコ国境では今とは逆にメキシコに越境しようとするアメリカ人が取り締まられている。
  • アメリカでは戦争後、軍による戒厳令が敷かれており、戦争を終わらせたカーティス将軍が影の独裁者として権力を握っている。
  • 核爆弾が投下されたニューヨークのマンハッタンの地下には秘かに住み着き、残された美術品や宝飾品などを運び出す人々や孤児たちのグループ。
  • そして「彼は生きている」というJFKの生存を暗示するようなメッセージ。


 とにかく設定は非常によくできているんで、歴史好きとかは楽しめる小説だと思います。


合衆国復活の日〈上〉 (扶桑社ミステリー)
Brendan DuBois 野口 百合子
4594036562


合衆国復活の日〈下〉 (扶桑社ミステリー)
Brendan DuBois 野口 百合子
4594036570


晩ご飯はマグロ丼とキュウリ