『告発のとき』

 仕事も忙しいピークが過ぎたんで、今週で終っちゃう『告発のとき』を見てきた。
 イラク戦争を扱った映画で、監督は『クラッシュ』のポール・ハギスイラクから帰還後に失踪した息子を、父親のトミー・リー・ジョーンズと女性刑事のシャーリーズ・セロンが追う、というストーリーです。
 「戦争によって人間性を奪われてしまった兵士」というテーマは、『ディア・ハンター』とか『ジャーヘッド』なんかにも通じるものがあって、戦争の直接的な被害を描くのではなく、兵士の心理に与えるダメージなどを描くことによって、イラク戦争の間違いというものを告発しようとしています。
 ただ、上にあげた2つの作品に比べると、兵士をきちんと描けていないのがこの映画の大きな欠点。
 父親のトミー・リー・ジョーンズや女性刑事のシャーリーズ・セロンにはスポットライトがあたっていて、肝心の息子や同僚の兵士たちの内面というのが描けていない。特に息子に関してはどんな人間だったのかというのがほとんどわからないので、事件の真相を知ってもいまいち割り切れないものが残ってしまいます。
 名脚本家のポール・ハギスですが、今回の脚本はいまいち。
 また、監督としてもクリント・イーストウッドなんかに比べれば、当然のごとく画面の力が弱いので中盤が少しだれてしまう感じです(街外れから遠くに揺らめく街の明かりを見せるショットが好きだってのはわかりましたけど)。
 原題は「IN THE VALLEY OF ELAH」。ゴリアテとダビテが戦ったエラの谷のエピソードが元になっています。
 このエピソードが映画を象徴するものとして適当なのかどうかは疑問なのですが、邦題の「告発のとき」は明らかにズレていると思う。