クリストファー・プリーストの『魔法』とかジェフ・ライマンの『夢の終わりに…』と同じ早川の<夢の文学館>シリーズの1冊。
帯に「革命の気運たかまる幻想都市を舞台に少年の恋と成長を描くめくるめく恋愛小説」とあって、これだけ読むと一種の幻想文学なのかと思うけど、これは架空の世界を設定することで19世紀の小説黄金時代の小説(特にフランス小説)を現代に復活させようとした作品なんだと思う。文体も非常に華麗で凝ってます。
主人公のガブリエルは、植民地的な島での部族の少女のアンジェリカとの恋愛から始まり、パリを思わせる都市でのインテリでサロンの主的な存在であるマティルダに、そして女優のエドウィージュに恋していきます。
このガブリエルと3人の女性に、ガブリエルの叔父のマテオ、マティルダの息子のダニエルが絡んでいくこの小説はまさに19世紀の心理小説のようなものになっています。
個人的には、もう少し革命や都市を征服している征服者の民族(イメージとしてはドイツ人)との絡みととか政治的なことを描いて欲しかった気もしますけど、著者のエドマンド・ホワイトは、そういうことにはそれほど興味がなかったんでしょうね。
19世紀の小説と違うのは、けっこうあからさまな性描写。下品さはないですが、ときにかなり露骨です。
クリストファー・プリーストの『魔法』やジェフ・ライマンの『夢の終わりに…』が好きな人にお薦めできる作品ではありませんが、19世紀のフランス小説とかが好きな人は読んでみてもいいかもしれません。
個人的には好みと少しずれていましたけど。
螺旋 (夢の文学館) Edmand White 浅羽 莢子 早川書房 1995-06 by G-Tools |