マイクル・コーニイ『ハローサマー、グッドバイ』読了

 「青春恋愛SFの傑作!」というふれこみですが、「青春恋愛」の部分については少し甘すぎると言うか、男子にとって都合が良すぎると言うか、ほとんど『BOYS BE』並じゃないか、と思わなくもない。
 主人公の少年も青臭すぎるし、ヒロインのブラウン・アイズの人物造形もそんなによくできているとは言えないでしょう。
 
 でも、この小説は「SF」としてよくできている。
 架空の惑星を舞台にしたこの小説は、基本的に地球と似た星、人類と似た人びとを描いていて、前半はそれほどSFらしくない。SF的なのは一種のテレパス的な能力を持つロリンという不思議な動物の存在や、少し奇妙な天候、そしてルームと呼ばれる通常よりも濃くなる海水の流れといったもの。
 ところが、後半になるとそういったSF的な要素が噛み合いだし、惑星の危機へと発展していくことになり、今までの甘すぎた恋愛は一気に悲劇的な色彩を帯び、そして今までの伏線を活かしたラストへとなだれ込みます。
 この伏線の張り方と、その仕掛けの内容はお見事。
 全体として前半がやや長く、後半が急ぎすぎな気もしますが、前半がきっちり描けているからこそ、後半の深みがあるのでしょう。
 カバーもいいと思います。


ハローサマー、グッドバイ (河出文庫 コ 4-1)
山岸真
4309463088