『崖の上のポニョ』

 映画の日なんで『崖の上のポニョ』を見てきたけど、面白い!
 宮崎駿は年をとればとるほど、映画が若返っていくというすごい人ですよ。息子の吾郎はデビュー作ですでに老人と化していたけど、駿は若い!

 確かにストーリーはあってなきがごとしだし、テーマとかもほとんどない(今日の夕刊に「宮崎駿が贈る母と子の物語」ってあったけど、自動車の運転は無茶苦茶で、台風の中で子どもを置き去りにするような母親だよ)。
 でも、宮崎駿の映画のテーマって言うのは「もののけ姫」で出尽くしていて、「リベラル左翼の青年は、エコロジー(サン)と福祉国家(エボシ御前)の間で右往左往するしかない」という答えが出ちゃってますからね。
 
 で、この「ポニョ」は「千と千尋」や「ハウル」にわずかに残っていたテーマとか感動的なストーリーとかも捨て去って、純粋にアニメの動きの快楽みたいなものが前面に出た作品。

 ガラスの中にはまったポニョとか、ハム食べるポニョとか、吹き上がる魚の大群とか、並の上を走る半魚人のポニョとか、宗介のお母さんの股をすり抜けるポニョとか、ほんと動きが面白い!
 ハリウッドのCGでは再現できない、というか再現したらかなり不気味になりそうな、セルアニメならではの表現だと思う。
 手描きっぽい街の様子とか、平面的な海とかもいい感じを出してる。
 あと、「カリオストロの城」で銭形がライオンの口の噴水の中に隠れているルパンを探すときの変に見える顔みたいのがふんだんに活かされていて、それも面白い!

 ポニョは半魚人のときが一番よくて、なんか奈良美智の絵みたいな「不気味+かわいい」感じがいいです。
 とにかくポニョの”動き”というものがいいんですよね。

 まあ、ストーリーや世界観はおざなりな部分もあって、「フジモトの正体は?」「ポニョの母って一体なんなの?」「なぜ世界が危機に?」「そもそもポニョって何もの?」っていう疑問は残るけど、そんな疑問がつまらなく思えるほどの「アニメの楽しさ」を感じさせてくれる作品だと思う。