前々から気になっていて読んでいなかった古川日出男。このたび『ベルカ、吠えないのか?』が文庫になったんで読んでみました。
日本軍の撤退とともにキスカ島に取り残された4頭の軍用犬、スプートニクに乗せられたライカ犬、スプートニク5号に乗り再び地上へと帰還したベルカとストレルカ、これらの犬たちとその子孫によって描かれる戦争の20世紀の歴史。とにかくこの設定とスケール感は素晴らしいと思います。
ただ、残念なのは登場人物が劇画の域を出ていない所。
全体的に能條純一のマンガのキャラクターみたいで、人間が出てくると醒めてしまう部分があります。特に、重要な役どころであるヤクザの娘のあり方はよくないですね。
だいたい、ここまでスケールの大きい話ならわざわざ日本のヤクザなどを登場させる必要はなかったのでは?「20世紀に生まれ消えていったソ連という国の神話」のような形で終った方が、終り方としては締まった気がしますね。