『トウキョウソナタ』

 映画の日ということで、『アイアンマン』か『トウキョウソナタ』で迷って、何となく天気も曇っていたし気分的に『トウキョウソナタ』を見てきました。
 なんとなく自己模倣的な作品がつづいているような気がしていて最近見てなかった黒沢清ですが、テーマも「家族」ということでいつもと違っていますし、脚本も外国の人が書いたということで、いつものワンパターン的な雰囲気からは抜け出せている気がする。


 香川照之演じる父親は突然会社をリストラされ、長男は家に寄り付かず、次男は学校で学級崩壊の引き金を引いてしまう。そんなけっこうありがちにも思える家族の解体を描いた映画ですが、前半はシリアスな部分とコメディな部分が混じり合った展開で面白く、笑えます。
 特にリストラされた香川照之に、失業者の道?を指南する津田寛治の姿には笑える。
 また、いきなりアメリカ軍の兵士に志願すると言い出す長男も、現実にはありえない話とはいえ、もしそういう制度があれば意外に志願する若者もいるんじゃないかと思わせる話です。
 香川照之のリストラのきっかけが、彼が課長を務める総務部が中国にアウトソーシングされるという,ちょっと前の「NHKスペシャル」まんまで、時代のリアリティに寄り添っているようにも感じる所もあるのですが、基本的にはリアルな世界からは少しずれた話で、寓話的な面白さがあります。


 ただ、後半のややシリアス気味になった後の展開は少し固いと言うか観念的と言うかで映画としてやや物足りない気もする。
 問題点の一つは母親の小泉今日子の描き方。母親役を演じている小泉今日子が映画の後半で「キレる」わけですが、そのキレ方というのが類型的で面白みがないような気がします。
 それと、中途半端に政治を取り入れている点もあまりいいとは思わない。
 長男が米軍に志願して、「アメリカが日本を守っているんだからアメリカ軍に入って日本を守るんだ」みたいに言う所まではいいけど、そのあとこの問題についてのTVの街角のインタビューとかで9条云々の話を出してくるのはあんまりいいとは思わないですね。
 そして、最後になって妙に登場人物のセリフが説明調になってしまうのも残念。
 後半の荒唐無稽な展開や説明口調のセリフがなくても映画の言いたいとこは伝わると思うんですけどね。