『リダクテッド』

 映画の日ということで渋谷のシアターNで『リダクテッド』を。
 ブライアン・デ・パルマによるイラク戦争についての映画で、イラクで起こった米兵によるイラク人へのレイプ・殺人事件を、兵士の持つビデオカメラの映像や動画投稿サイトの映像、監視カメラの映像などを組み合わせてつくりあげている。
 といっても、このそれらしい映像はすべて監督がつくりあげたフィクション。「偽ノンフィクション」とも言えるような映画です。


 湾岸戦争以降、戦争報道は見事なまでに軍の統制化に置かれてしまい、これほどメディアが発達しているにもかかわらず、戦争のリアリティがなかなか伝わらないという現実があります。そこで、デ・パルマが注目するのが兵士も持つビデオカメラや動画等交際となどの個人的なメディア。
 同じイラク戦争を扱ったポール・ハギスの『告発のとき』でも、携帯の中のムービーが重要な鍵になっていて、「イラク戦争においては、個人的なメディアの中にこそリアリティがあるのでは?」という感覚は共有されていると思うのですが、『告発のとき』がそれを物語の本の一部としてしか使わずに、映画のほぼ大部分を残された家族の物語という据わりのいい話にしたのに対して、この『リダクテッド』では徹底的にそうした個人的なメディア、そしてイラクという場所にこだわることで、イラク戦争のリアリティを掴もうとしています。
 ただ、すべてがそのような断片ではなく、アメリカ兵たちの日常である検問所のシーンなどは、非常に映画的の撮られており(そしてこのシーンが上手い)、また、アメリカ兵の個々の造形などもしっかりしており、単にコラージュ的な技法によってのみリアリティを出そうという映画ではないです。
 日々の検問がもたらすストレスと、戦友の死、そして暴発といった具合に、ストーリーとしてもしっかりとした骨格を持っており、さすがデ・パルマという感じします。
 

 逆にコラージュ的な手法にこだわるあまりに浮いている部分などもあって、ニュース映像の部分とか、アメリカのイラク戦争に反対する人の動画とか、いらなかったのではと思える部分もあります。
 やや策に溺れる感じがするのもデ・パルマならではなのでしょうか。
 それでも、新しい時代の戦争映画としては『ジャーヘッド』以来、久々に見るべき映画かと。