新自由主義はたぶん崩落しない

 今日の読売新聞の「回顧 2008 思潮」という特集では「「新自由主義」崩落の年」と銘打って、今年の主な論文が紹介されているんだけど、今回の世界的な金融危機で一時的な逆風が吹いても新自由主義が勢いをなくすとは思えない。
 例えば、オバマ大統領の誕生が新自由主義への異議申し立てみたいに取られている面があるけど、オバマ政権の閣僚の多くをクリントン政権の人脈がしめることになりそうです。特に経済閣僚は財務長官のガイトナー、国家経済会議(NEC)委員長のサマーズとクリントン政権下の財務長官ロバート・ルービンの人脈で固められており、ゴールドマン・サックスでCEOを勤めたルービンの影響下にある人物が、経済運営にあたるということで、市場経済を規制するような方向にはいかないのではないでしょうか?(スティグリッツあたりが入れば違ったのかもしれませんけど)。


 それよりなによりも、日本では新自由主義以外に若い世代にとって「公正さ」を確保する道はないのではないでしょうか。
 市場を規制するということは、政治が力を持つということになりますが、現在の日本の人口構成だと、政治では常に数の上で高齢者に軍配が上がります。
 政治の力が増せば増すほど、政府の再分配機能が強化されればされるほど、高齢者を優遇する政策がとられる可能性がたかまるわけです。
 例えば、今回の定額給付金などでも、景気対策という観点からすれば高齢者に対して増額するというのはまったく筋違いですが、選挙のためのバラマキとして高齢者への増額がなされています。また、物価スライド制をとるはずの年金でも、過去のデフレ時に年金の減額がなされないなど、高齢者の数の力の前に制度がねじ曲げられることもありました。
 もちろん、これに対して「それは若者が選挙に行かないからだ」という批判が可能でしょうが、若者が全員選挙に行っても高齢者の数の前に勝てなくなった時、この批判は無効になります。そして近い将来、その時はやってくるでしょう。
 だから、若い人たちは「公正さ」を、政治にではなく市場に求めるしかないわけで、市場を重視する新自由主義に期待するしかないわけです。


 個人的には、市場に「公正さ」を求めるからというよりは、自由を他の価値よりも卓越した価値とみなすという点から新自由主義的な政策を指示するわけですが、世間的にはこの「公正さ」というものこそ、新自由主義の肝であり、新自由主義への支持をこれからも支え続けるものでしょう。