『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』

 『タイタニック』のレオナルド・ディカプリオケイト・ウィンスレットが11年ぶりに共演!ですが、なんて苦い映画…。
 ただ、さすが監督が『アメリカン・ビューティー』や『ジャーヘッド』のサム・メンデスで見応えがある。
 まあ、ヒロインのケイト・ウィンスレットの行動が許せない、理解できないという人もいるでしょうし、決して万人に受ける映画ではないと思いますが、今まで存在した夫婦もの映画のさらに一歩奥に進んだような映画です。

 
 舞台は1950年代中盤のアメリカの郊外。理想の豊かさを手に入れたはずの郊外で主婦たちが空虚な生活から逃げ出そうとするストーリーは、最近ありがちなものであって、例えば、『めぐりあう時間たち』のジュリアン・ムーアのパートがそうでしたし、同じジュリアンムーアが主演した『エデンより彼方に』にもそんな話でした。
 そんな手垢のついた題材ではあるんですが、サム・メンデスの描くこの映画はそれより一歩先を行っていて、それをさらに悲劇的に描きます。
 この手の話は何も知らない主婦が自意識に目覚めて、まったく理解のない夫もを去るというのがパターンですが、この『レボリューショナリー・ロード』では、ヒロインのケイト・ウィンスレットは昔は女優を目指していた自意識の高い女性ですし、ディカプリオもそれなりに妻の悩み、空虚感に対して理解のある男性です。
 そこで、2人は子供を連れパリに移り住むという計画を立て、2人はその夢に向かって再び若き日の理想と輝きを取り戻すかと思えたのですが…。


 映画の舞台も設定も何もかも違うのですが、僕がこの映画を見て思い出したのは宮崎あおい主演で塩田明彦が監督をした『害虫』。
 『害虫』の宮崎あおいも「正しい/間違っている」の視点からすると肯定しにくいヒロインなのですが、「今・ここ」を抜け出したいと思って不発に終る行動を繰り返します。『レボリューショナリー・ロード』のケイト・ウィンスレットは何だかその宮崎あおいの姿に重なりました。たとえ間違っていたとしても、「今・ここ」から抜け出したい切実さが見ている方に伝わってきます。


 あと、特筆すべきはディカプリオの演技。ありがちな役だとは思うのですが非常に上手いです。また。郊外の住人を描くサム・メンデスの腕は相変わらず冴えている。さすが『アメリカン・ビューティー』の監督ですね。
 見る人を選ぶ映画だと思いますし、『タイタニック』を期待してカップルで見に行っちゃったりしたら悲惨ですが、個人的にはすごくよかった映画です。


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宮崎あおい, 田辺誠一, 蒼井優, 沢木哲, 塩田明彦
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