デイヴィッド・ピース『TOKYO YEAR ZERO』読了

 イギリス人の新進気鋭の作家が戦後の日本の混乱期を描いたノワール
 1945年から46年にかけて10人の女性が強姦殺人された小平事件を中心に扱っており、犯人の小平義雄が1928年の済南事件で中国兵6人を殺害した際は勲八等旭日章を受けた事実などを元に、捜査する刑事の心の傷と秘密を描こうとする構成になっています。
 なかなか面白いテーマですし、資料などもよく読み込んである、また本の中心となるトリックもけっこう伏線が張ってあって考えられています。
 ただ、何といっても文体がうるさすぎ。
 戦後の混乱を描くために主人公のモノローグや意識の流れ、そして夢の情景などを織り交ぜた叙述になっているのですが、さすがにここまで書かれるとストーリーに集中できない。太宰治の「トカトントン」に影響を受けたと思われれる擬音表現も使いすぎ。もっと、「ここぞ」というところで使って欲しいですね。
 

TOKYO YEAR ZERO
酒井武志
4163264205