現在の経済危機を予測した本として、英フィナンシャルタイムズの「2008年ビジネスブック・オブ・ザ・イヤー」に選ばれたのがこの本。
さらに日本では池田信夫は原著を去年のベストにあげています。
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/m/200812/1
(池田信夫の名前をあげると、彼の一部の言説から「偏ってるんじゃない?」と思う人もいるかもしれませんが、まああげている本は特に問題なく変なバイアスも(それほど)かかっていないと思います)
著者は「ピムコ最高経営責任者(CEO)兼共同最高投資責任者(共同CIO)。国際通貨基金(IMF)に15年間勤務したのち、米シティ・グループ系列のソロモン・スミス・バーニー(ロンドン拠点)のマネージング・ディレクターを務める。1999年にピムコに入社。マネージング・ディレクター、投資戦略グループのシニア・メンバーを務める。その後、米ハーバード大学基金を運用するハーバード・マネジメント・カンパニーの社長兼CEOとして2年間勤務。その間、同大学のビジネス・スクールで教鞭をとり、同大学の副財務長も務めた。2007年末にピムコに復帰。国際経済に関する執筆多数。現在は女性研究国際センターやピーターソン国際経済研究所の理事、米財務省国債発行諮問委員会、IMFの資本市場協議グループのメンバー、マイクロソフトの運用諮問委員会会長を務める。投資業務経験25年。オックスフォード大学大学院にて経済学博士号、ケンブリッジ大学にて学士号を取得」という人物で、注目すべきは世界最大の債券ファンド・ピムコのCEOにして、高いリターンを長年出していることで名高いハーバード大学基金のCEOやIMFでの勤務経験がある点。
ですから、この本も2008年の前半からこれからの混乱を予測した本というだけでなく、それに対して投資家はどのように考えるべきなのか?、IMFなどの国際機関はんまにをすべきなのか?ということが書いてある点に大きな特徴があります。
特に投資家がどのように考えればいいのか?ということに関しては、資産配分やリスクの考え方について詳細な解説がしてあり、興味深いです。
株、債券、不動産や商品などの実物資産、ヘッジファンド、プライベートエクイティなどそれぞれ分野についてどのように配分すべきかが検討されており、本格的な運用をしている人には役に立つかもしれません(一般の人にとってはでかすぎる話かもしれませんが)
著者のエラリアンは、2007年の末にほぼこの本を書き終えたと言っていますが、金融市場の機能不全などの金融危機に関してはかなり的確に予言しています。
一方、今のところ少しズレているのは新興国の台頭とインフレ懸念。
アメリカの景気後退は現在の所新興国も巻き込んでおり、新興国の方が大きなダメージを受けているケースも見受けられますが、この混乱から新興国がいち早く立ち直って世界経済の新たなる成長エンジンになるのか?
また、現在はどちらかというとデフレの危機が起きていますが、これがインフレに反転することはあるのか?確かグリーンスパンもインフレを懸念していたと思うのですが、再び商品相場が上昇し、世界経済に対するインフレ圧力が強まるかどうかということはこれからの注目でしょう。
純粋に現在の経済危機を読み解きたいなら竹森俊平の『資本主義は嫌いですか』のほうがわかりやすいし、面白いと思いますが、「投資」という視点で考えたいという人は読んで損のない本だと思います。
資本主義は嫌いですか―それでもマネーは世界を動かす
竹森 俊平