江國香織『きらきらひかる』読了

 普段なら絶対に読まないタイプの小説なのですが、生徒が貸してくれたので読んでみた。
 妻はアル中、夫はホモという夫婦を描いた作品ですが、精神医学的にいえば、ここで描かれている関係は共依存ですね。妻は漠然とした不安を抱えて旦那に物を投げつけて暴れる→旦那、抱きしめて落着かせる→妻は退行、そして嗜癖化、というメカニズムが働いていると思います。妻はちょっと境界例っぽいです。治療には時間がかかるかもしれません。
 と、読んだ感想としてはこんなことが浮かんできます。
 それだけ、精神病理というものが非常にストレートに描かれた作品なんですよね。人によってはこれを繊細さとか純粋さとかとるのでしょうが、まあ病理じゃないかと。
 ナルシシズム的な文体は村上春樹に通じるものがあって、夫婦の生活感は希薄。
 ただ、村上春樹の場合はナルシシズム的な文体の下に暴力とSEXが仕込んであるのですが、江國香織にはナルシシズムしかない。


きらきらひかる (新潮文庫)
江國 香織
4101339112