デニス・ジョンソン『ジーザス・サン』

 記事を書いて保存したら全部消えたという悲しい事が起こってしまったので、消えた記事を思い出しながら簡単に。


 白水社の新しい海外文学シリーズ<エクス・リブリス>の第1弾。
 訳は柴田元幸で、アメリカの90年代以降を代表する短編集。
 ヤク中とか社会からドロップアウトした人びとの話で、そういう中での暴力とか哀しみとか「生の輝き」みたいなものが描かれている。

「俺たち、この道路から永遠に出られないんだぜ」(57p)


 ヤク中たちが主人公の小説はアメリカ文学にはよくあるもので、ブローティガンとかブコウスキーなんかもそう。
 でも、この『ジーザス・サン』がそれらの小説と違うのは、この小説が非常に道徳的な点。
 文体はぶっきらぼうだけど、「仕事」なんかはストレートな労働讃歌だし、中絶を扱った「ダーティ・ウェディング」なんかも非常に道徳的なお話。
 そのあたりが個人的には引っかかるというか、素直に浸れない所ではあるけど、アメリカでこの小説が非常に受けた理由はきっとそこにあるのでしょう。

 
 最後にひとつ、せっかく新シリーズの第1弾なんだから、今後のラインナップを紹介したパンフレットかなにかをつけて欲しかった。


 以上、元エントリーを1/2くらいに圧縮して再現してみました。 

ジーザス・サン (エクス・リブリス)
Denis Johnson 柴田 元幸
4560090017