『フロスト×ニクソン』

 「絶対に観なきゃ」というほどの思い入れはなかったけど、観てみたらこれはいい映画。
 1977年に放送されたイギリスの司会者デヴィッド・フロストによるニクソン元大統領のインタビュー番組を描いた映画で、元は舞台で上演されていた劇。ですから、派手なアクションとかはないですし、基本的にはインタビュー番組をなぞる形で映画は進みます。
 けれども、これがスリリング!
 切れ者で議論に強く、心理戦にも長け、弁護士としての輝かしいキャリアもあるニクソン。そんなニクソントークショーの司会者であるフロストはインタビューの序盤、押されまくるのですが、どうやってその状況を逆転したのか?そして、最後にテレビに映し出される政治家としてのニクソンの最後。ニクソンケネディのテレビ討論の神話も含めて、メディアを考える上でもニクソンというのは外せない人物ですね。

 
 また、この映画を観ることでニクソン人間性みたいなものも少しわかってきます。
 ニクソンにはいろいろな逸話があるのですが、個人的に印象深いのが第2次大戦に従軍した時にポーカーで勝ちまくったという話。
 リチャード・ニクソン - Wikipedia

海軍にいる間にポーカーを覚えたニクソンは、アメリカ海軍きってのポーカーの名手としてつとに知られ、1945年8月15日の終戦までに賭けポーカーで1万ドル(現在の紙幣価値で約1000万円)以上を荒稼ぎしたといわれている。

 
 ここまで勝ちまくったというのはイカサマをしたか、よっぽど相手の心理を読むことができたか、ということなのだと思いますが、この映画を観る限り、ニクソンは相手の心理を読む達人で、なおかつ相手の心理を操ることもできる人物だったのでしょう。相手をうまく嵌める力というのがニクソンにはあったのだと思います。
 しかし、この能力が過信につながったことが、ニクソン失脚の原因でしょうね。
 とにかく心理戦みたいなものを楽しみたい人に圧倒的にお薦めできる映画。